処刑されても続く「オウム井上元死刑囚」の再審 なおも戦うワケ

社会週刊新潮 2019年2月14日号掲載

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 昨年7月、オウム真理教の教祖である麻原彰晃など、13人の死刑が執行された。教団への強制捜査から23年あまり。日本を覆った衝撃も、執行の日を境に過去の出来事へと変わりゆく。だが井上嘉浩元死刑囚の遺志には、現在の出来事として触れることができる。再審請求という形で。

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 刑事訴訟法では、有罪が確定した本人の死亡後でも、配偶者や両親、子、きょうだいといった遺族のみが、本人のため再審請求を行うことができる。再審開始へのハードルはきわめて高いと感じながらも、訴えを続けるのが伊達俊二弁護士だ。

「昨年7月6日、井上氏の死刑が執行されました。生前の3月14日、本人が再審請求を行い、私が担当しましたが、死刑によって終了決定となりました。しかし、遺族が再審請求を行うことは可能です。私は“これでは井上くんの思いは遂げられない”とご両親を説得し、ご両親を申立人として昨年10月15日に再度、再審請求を提出しました」

 その再審請求も、引き続き、伊達弁護士ら本人のときと同じ弁護人が代理人をつとめている。が、誤解を恐れずに言えば、国民の大半は執行でひと区切り、と見ているであろう。そんななか、なぜ戦うのか。

「井上氏は生前、“自分は、死刑に処されるかもしれないことは覚悟している。死刑を免れたいがためだけに再審請求をするのではない。間違った事実認定で死刑判決が確定しているから行うのです”と話していました。私も、死刑引き延ばしの目的では引き受けないと言い続けていた。井上氏が死刑となる過程で、明らかにおかしい事実認定があるので、それを詳らかにするため引き受けたのです」

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