白井佳夫氏が「人生最高の映画の一本」と絶賛したガレッジセール・ゴリ監督作品「洗骨」

エンタメ 映画 週刊新潮 2019年2月21日号掲載

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 テレビ局とのタイアップ映画や「ボヘミアン・ラプソディ」とは話題になる頻度は比べ物にならないが、一部で高い評価を獲得しているのが、ガレッジセールのゴリこと照屋年之監督の初となる劇場本格公開作品だ。

 専門家筋の評価は極めて高いようで、映画評論界の最重鎮、白井佳夫氏は年間ベスト級の点数をつけている。

 どこが優れているのか。白井氏の評を転載しよう。

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 カラー・シネマスコープの横長大画面に、シンプルで生命力あふれる人間ドラマを、沖縄の風土に根ざして確固として描いてみせた、新しい日本映画の誕生である。

 監督・脚本は今年47歳のお笑いコンビ「ガレッジセール」のゴリこと照屋年之。沖縄出身で日大映画学科演技コース中退の彼が、芸人生活中に10本の長短篇映画を作り身体で学んだ映画の映像演出力を、本格長篇劇映画第1作として噴出させた、ういういしい力動感のある一作だ。

 沖縄の離島で、ある一家の母親(「淵に立つ」の筒井真理子)が亡くなる。父親(奥田瑛二)は酒に溺れ、長女(「光」の水崎綾女)は、棺の中の母の髪をなでる。長男(筒井道隆)はイラだち、父の姉(「キツツキと雨」の大島蓉子)は沖縄女らしく、図太く一族をリードする。

 それから4年、「洗骨」の日がやってくる。来島するフェリーの船首から海に向って叫ぶ長女は、大きなお腹で妊娠中。父親はまだ酒に溺れ、長男は離婚騒ぎでイラだち、父の姉はやはり気丈な一族のリーダーだ。

 亡くなった母の遺骨が4年ぶりに棺から取出され、一家の手で洗われる離島の儀式が沖縄の風土に根ざした、確固とした映像表現で描かれていく壮観。長女を追ってくる男(鈴木Q太郎)の一家への加入や、一族の連帯成立を描く漁の描写などの、適確さ。

 そして洗骨の直後にやってくる、同じ場所での長女の出産をめぐる騒ぎを描く、ユニークな視点。老いた人の死と赤児の出産は、沖縄の海や空や大地を背景とした、人間の生命力の継承現象であることが、ラストシーンで骨太に示され、観客の感動を呼びさますのが、何とも素晴らしい。

 監督の亡き母への献辞で終るこの映画は、形式的な完成のみを求め沈滞する日本映画への、初心の痛烈な一撃である。

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監督・脚本/照屋年之
出演/奥田瑛二 筒井道隆 水崎綾女 大島蓉子
丸の内TOEIほかにて全国公開中

映画評論家 白井佳夫