市原悦子さん遺作・映画「しゃぼん玉」が全国の刑務所や少年院で上映され続けるワケ

芸能 2019年1月24日掲載

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 演技派女優の市原悦子さんが、12日に82歳で亡くなった。ドラマ「家政婦は見た!」、映画「黒い雨」、「まんが日本昔ばなし」のナレーションなど、数々の代表作を持つ市原悦子さんの遺作となったのは、映画「しゃぼん玉」だった。

 乃南アサさんの同名小説を原作として映画化された本作。親の愛情を知らずに育ち、女性や老人だけを狙った通り魔や強盗傷害を繰り返してきた青年・翔人(林遣都)が、ある山奥の村で市原悦子さん演じる老婆スマを助ける。スマと暮らすようになった翔人は、スマや村人と接するうちに自らが犯した罪を自覚し始める――というストーリーだ。

 2017年3月公開の本作だが、実は現在、成人の刑務所や少年院などで上映会が行われていることをご存じだろうか? 本作プロデューサーの豊山さんに話を聞いた。

「企画段階からずっと、映画『しゃぼん玉』を刑務所や少年院などの施設で上映できないかと考えていました。京都での舞台挨拶の時、京都刑務所の所長さんや刑務官の方々とお会い出来、この話をしたことがきっかけとなって、京都刑務所で初めて本作の上映会を開催して頂くことになったのです。
 上映会では、皆で一緒に映画を鑑賞した後、私が製作について話し、受刑者の方々との意見交換を行っています。この活動を通じて、一人でも多くの方々に自分自身と向き合い、居場所を見つけることの大切さを感じて貰えれば、そしてそれが彼らの改善更生の意欲や贖罪の気持ちに繋がればと思っております」

 豊山さんによると、これまでに9カ所の刑務所や少年院で上映会を行い、実際にこの映画を鑑賞した受刑者からは、感動の手紙も寄せられているという。

「受刑者の方たちや少年たちからは『更生は自分自身が行う以外前へ進めないと感じた』『私にも待ってくれている人がいる。そのことを忘れずに頑張っていきたい』『自分も被害者に対して、贖罪の気持ちを持って生活していこう』といった感想文が届いています。そんな感想文を読むたびに私は、彼らにとって更生のきっかけになればと思います。
 市原悦子さんのご逝去は、あまりにも突然すぎて言葉がありません。普段の市原さんは優しく可愛らしい雰囲気に包まれています。そんな市原さんが現場に入ると、空気が変わり、表現者として圧倒的な存在感を放っていました。市原さんが演じているからこそ、スマお婆ちゃんの一言一言が受刑者の方々や少年たちの心に届いているのだと思います。これからもこの上映会という活動を全国で続けていく予定です」

 突然の訃報に未だ悲しみは尽きないが、市原悦子さんが遺した数々の作品は、今後も人々に希望を与え続けるに違いない。

デイリー新潮編集部