「いきなり!ステーキ」と「焼肉ライク」が“代理戦争” その戦場は「幸楽苑」

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幸楽苑を“土俵”に両社が激突

「いきなり!ステーキ」は「ペッパーランチ」も手掛ける「ペッパーフードサービス」が運営している。当初は“ステーキの立ち食い店”として登場し、脚光を浴びた。

 立ち食いにしたのは回転率を上げ、低価格を実現させるためだった。その戦略が人気を呼び、シルバー層も来店。そのため最近は着席が可能な店舗も増えている。

 もともと客単価は2000円台と高く、原価率に至っては70%以上という常識外れの数字だったが、一大ブームと呼んでもいい大ヒットを記録し、出店数も売上も右肩上がりだった。

 ところが昨年に値上げなどがあり、“安い”というイメージが壊れつつある。来店者が減少しているとの報道があったほか、例えば東洋経済ONLINEは18年3月4日に「いきなりステーキ、急成長に潜む一抹の不安」の記事を掲載、多くの読者に注目された。

 対する「焼肉ライク」は、「ダイニングイノベーション」が運営する。代表取締役会長は西山知義氏(52)。焼肉チェーン店「牛角」の創業者として知られる。

「牛角」も焼肉の“価格破壊”を成し遂げた店だが、「焼肉ライク」は「1人焼肉専門店」を謳い、それ以上の低価格化を実現した。回転率を重視するのは「いきなり!ステーキ」と同じ戦略だが、メニューの厳選もコストカットに成功した一因のようだ。

 具体的には、焼肉店ならおなじみの冷麺やユッケを置いていない。「焼肉とご飯」もしくは「焼肉とアルコール」に特化することで客単価を1400円台にまで引き下げたのだ。

 両社の特徴や今後の見通しなどをフードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏に訊いた。

「『いきなり!ステーキ』は18年11月に363号店となる秋田東通り店をオープンして、全国制覇を果たしました。昨年1年間で202店をオープンさせたのですが、今年も210店の新規出店を計画しているとのことで、経営陣の強い意気込みを感じます。都心しか営業できないとの下馬評を跳ね返し、郊外の住宅街やロードサイドでも成功しています。最近はシャッター通りへの出店なども期待されているようです」

「焼肉ライク」の面白さは、西山会長が回転寿司のビジネスモデルを焼肉に応用することを原点にしたところだという。

「寿司はおおよそ1.3兆円の市場規模があり、そのうち約6000億円を回転寿司が占めると言われます。1人で来店し自分専用のロースターで焼肉を食べる、というスタイルは、確かに回転寿司と相通じるものがあります。『焼肉ライク』は昨年8月、新橋に1号店をオープンしましたが、16坪20席の店で1日に20回転、月商が1600万円という驚異的な売上を達成しました」

 昨年11月には西新宿に2号店が営業を開始。今年は、渋谷、横浜、秋葉原、五反田の出店が計画されているという。

「本社には加盟の希望が殺到しており、現在は70社が契約を待っている状態だそうです。今後の経営方針としては、『5年間に300店舗』を掲げています。これから知名度も飛躍的に高まると考えられ、今年19年の外食産業を席巻する台風の目になるでしょう」

 相撲にたとえれば、横綱の「いきなり!ステーキ」に新入幕の「焼肉ライク」が真っ向勝負を挑む、というイメージになるが、外食業界を驚かせたのは、その対決に“土俵”を提供する会社が出現したことだ。

 それが「幸楽苑ホールディングス」の「幸楽苑」だ。特に関東在住の方には、おなじみだろう。ラーメンを中心とする飲食店チェーン。九州や北海道を除く全国に520店舗を展開している。

 現在、「幸楽苑」は不採算店が顕在化しているのだが、打開策として「いきなり!ステーキ」と2017年10月にフランチャイズ(FC)契約を結んだ。そして「幸楽苑」の不採算店舗を「いきなり!ステーキ」に変えてしまったのだ。

 前代未聞の荒療治と言っていいだろうが、これが成功を収める。同社の業績が上昇するようになったのだ。

 そして「幸楽苑」は18年12月26日、今度は「焼肉ライク」ともFC契約を締結した。要するに、「モスバーガー」が「吉野家」と「松屋」のFC契約を同時に請け負うようなものだ。どれほど珍しい事態かは簡単にご理解いただけるに違いない。

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