“少年A” 酒鬼薔薇聖斗の『絶歌』出版騒動 4千万円印税の使い道

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世界観を表現したい

 当初、版元を通して“印税で遺族や被害者へ賠償したい”との意向を示していたAだが、

「彼は、自分が犯した犯罪で自分のために金儲けをしているのです。『印税の一部を賠償金の支払いに回します』との話はありましたが、当然断りました」

 あらためて振り返るのは、淳君の父・土師守さんである。

「『絶歌』の出版は、遺族にとっては傷害罪と同じ類のものです。30歳を過ぎた大人が引き続き少年法で守られており、それゆえペンネームでの出版という卑怯なことが可能なわけです。この本はメディア関係者から渡されて自宅にありますが、いまだに読んではいません。いえ、読めないのです」(同)

 同書は25万部を売り上げ、Aは4千万円もの印税を手にしたという。版元の太田出版によれば、

「被害者の方々へはお金のお支払いを申し出、受け取りを承諾された方にはお支払いしたとのことです」

 その後、Aは2万3千字以上にわたる手紙を本誌(「週刊新潮」)に送りつけてきた。出版に至る経緯が粘着質な筆致で綴られており、あわせて『存在の耐えられない透明さ』と題したホームページの開設も告知(現在は閉鎖)。自身とみられる覆面姿の裸体写真やナメクジのコラージュなど、四方八方から悪趣味が襲いかかってくる内容だった。こうした“創作活動”にも、惜しみなく印税が投入されているのは想像に難くない。

 精神科医の野田正彰氏が言う。

「執筆やホームページの開設で自身の内的世界を売り物にした彼の倫理観は、事件当時から変わっていません。ただ頭は回るので、いま表に出れば猛烈な批判に晒されることはわかっている。どこかで隠棲しながら、自分の世界観を表現したいという欲求を持ち続けているのだと思います」

 印税を元手に、新たな企みへと不気味な触角を伸ばしているに違いない。

週刊新潮 2018年12月27日号掲載

ワイド特集「平成の『カネと女と事件』」より

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