年間死者は交通事故死の5倍… 「浴室の死神」ヒートショックから逃れるチェックリスト

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九死に一生を得た人

 東京防災救急協会によると、入浴中の心臓機能停止事例の救命率は約1%。つまり、ヒートショックに見舞われた人はほとんどが死亡してしまうわけだが、中には九死に一生を得た人もいる。

「入浴時に動けなくなって助かった人の話は2例ほど聞いたことがあります。ただ、基本的に経験者は亡くなっているので、これが典型なのかは分かりません」

 と、高橋氏。

「1人目は80代の一人暮らしの女性で、夜、入浴していた。湯船に浸かっているうちに気持ち良くてボーッとしてしまったそうです。で、いざ出ようとしたら、全く体が動かない。意識が戻ってから5分から10分の間の出来事だったと思われますが、手足が動くようになり、湯船の栓を引き抜いて、何とか這い出たそうです。そんな経験をした後、彼女は夕方、ヘルパーさんに来てもらってお風呂に入るようにしたといいます」

 もう1人は軽度の認知症を患っている男性。

「夜遅くの長風呂が好きな方で、家族からは危ないから止めろと言われていた。ある日、それにしても長いということで見に行ってみたら、意識を失っており、いくら呼びかけても返答がない。奥さんと娘さんで持ち上げようとしたけど、重くて持ち上がらない。で、助けを呼んだりして大騒ぎしているうちに意識が戻ったといいます」(同)

危険度簡易チェックシート

 では、ヒートショックという「浴室の死神」から逃れるためには、どのような対策が必要なのか。

「ベストなのは、浴室と脱衣室を事前に温めておくこと。あと、お風呂の温度を40℃以下にしておくことと、お湯に入る前にかけ湯をするのも大事です」

 と、先の早坂氏は語る。

「かけ湯は、いきなり体の中心にバシャッとかけるのではなく、手足の先から徐々にかけていく必要があります。また、入浴する前には水を飲んだほうがいい。事前に水を飲んでおくことによって、血管が詰まるのを防ぐことができます」

 掲載の「ヒートショック危険度 簡易チェックシート」をご覧いただきたい。調査では、自宅の脱衣室や浴室に暖房設備がないと答えた人が多かったようだ。

「昔ながらのお風呂だと、デジタル管理ではない場合も多いです。それでも、湯温計でお湯の温度を測るなど、対策はそれほど難しくありません。お風呂が沸く2、3分前に高い位置からシャワーで熱いお湯を出すと、湯気が立ち込め、浴室が温まります。沸かす際にフタを開けておくといったちょっとしたことも大事です」(同)

 少しの工夫が、自分自身や家族の命を守ることに繋がるわけである。

「脱衣室に小さな暖房器具を置くのも良い。また、浴室に入ってから下着を脱ぐことや、入浴前に深呼吸することも提案しています。深呼吸を2、3回して交感神経を落ち着かせれば、血圧は下がります」(同)

週刊新潮 2018年12月6日号掲載

特集「なぜ毎年1万9千人も急死するのか!? 『浴室の死神』ヒートショックから逃れる10カ条」より

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