「ウルトラマンの法則」で“正しく叱る” 言葉遣いだけじゃない指導のコツ

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マツコに学ぶ

 理論はわかった。さぁ後は実践あるのみだが、言うは易く行うは難し。わかっていたって、ついつい部下の前に出ると頭に血が上り、ここまでのコツを忘れてしまいそう。

 そこで、『アンガーマネジメント 叱り方の教科書』の著者、日本アンガーマネジメント協会の安藤俊介・代表理事が言う。

「普段怒っている人は、もうそれが正しいと思っているので、直すにはトレーニングを積んでいくしかありません。その際、意識してほしいのは、言葉遣いを変えること。丁寧な言葉遣いを意識する。すると、振る舞いも丁寧になります。それを続ければ、自然と習慣化されていくのです。また、参考になる叱り方を真似るべきでもある」

 その一人が、あの有名タレントだ。

「当協会が調査している『怒られたい著名人』は、マツコ・デラックスさんが4連覇しています。彼女は、常にご自身がマイノリティであると意識しているため、上から目線にならないからではないでしょうか。その姿勢には、学ぶところが多くあると思います」

 終わりに、再び原点に立ち戻ろう。

『「怒り」の上手な伝え方』の著書がある、NPO法人「アサーティブジャパン」の森田汐生・代表理事は、

「根本では、上司と部下も、人と人としての価値は同じ、と相手を尊重して叱ることが大切です。その原点から考えれば、部下を追い詰めたり、“お前が悪い”という言い方にはなりません。“○○はまずいので、変えてほしい”と、人にフォーカスするのではなく、事にフォーカスして叱ります。良い叱り方とは、上司として怒りをぶつけたり、呑みこんだりするのではなく、自分は何を望むのか、相手に何をしてほしいのかを、具体的に言葉にすること。すると、部下も自分のためを思って叱られたと納得し、変わり、成長する。こうして初めて、上司が部下の成長にコミットすることができるのです」

 と言うのである。

 アリストテレスが遺した言葉の中にこんなものがある。

「感情に任せて怒ることは誰にでもできる。しかし、適切な相手に、適切な時に、適切な目的で、適切に怒るのは難しく、誰にでもできることではない」

 すなわち、2千年以上も人は「怒る」ことの難しさに頭を悩ませてきた、というワケだ。

 かように「怒り方」の奥は深い。難しい。

 が、賢人を唸らせるのはともかく、「パワハラ上司」と言われないための、最低限のスキルであれば、これらの方法を血肉化させ、身に付けるのは可能かもしれないのだ。

 何で部下にここまで気を遣わなければいけないんだ、と釈然としない向きも多かろう。しかし、情けは人のためならず。これは部下のためだけではなく、あなたが会社にパワハラ認定され、不当な扱いを受けることから身を守るための術でもある。しかも部下が成長し、業務の能率が向上すれば、あなたも楽になり、上層部からの評価も上がろうというものだ。

週刊新潮 2018年8月30日号掲載

特集「『NGフレーズ』リスト付き! 『パワハラ告発』されない大人の『怒り方』」より

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