移民受け入れ、水道民営化……「改革」は日本人を幸せにするのか 『国家の品格』藤原正彦氏の大正論
いつも改革
国会やメディアで、あるいはネット上では、現政権支持者と「反・アベ」が対立する構図がこの数年続いているものの、与野党共に口にし、経済界も主張するのは「改革」の必要性である。
たしかにバブル崩壊以降の状況を踏まえて、政治家が「改革」を訴えるのは当然かもしれない。「日本のやり方は古い」「グローバル・スタンダードを取り入れよ」「規制緩和すれば景気は良くなる」等々、その時々はもっともに感じられる主張が声高に唱えられ、一部は実行されてきた。が、一方で延々とその種の「改革」が繰り返されたはずなのに、社会が良くなったという実感を持てない人も多いことだろう。「改革疲れ」といった言葉が使われることもある。
この状態をどう見ればいいのか。
270万部を突破したベストセラー『国家の品格』の著者、藤原正彦氏は新著『国家と教養』で、安易な「改革」こそが、現在まで続く日本の停滞の原因だと指摘している。
どういうことなのか。『国家と教養』から見てみよう(以下、引用はすべて同書より)
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グローバル・スタンダードの罠
90年代後半から始まった「日本大改造」こそが、戦後50年間の日本の繁栄を支え、「奇跡の復興」をもたらした原動力とも言える日本型システムを葬る行為だった、というのが藤原氏の分析だ。
「キーワードは『グローバル・スタンダード』でした。それまでは穏やかな新聞と思われていた日本経済新聞が、アメリカ帰りのエコノミスト達に共鳴するかのように突然トーンを上げ始めました。成果主義を喧伝し、それまでの終身雇用を基本とした日本型経営や、株式持合いなどの日本型資本主義を、悪玉に仕立て上げ始めたのです。(略)
グローバル・スタンダードとは和製英語で定義は不詳ですが、内容はいわゆるアメリカ型資本主義、いわゆる新自由主義、いわゆる市場原理主義、いわゆるグローバリズムです。元を正せばシカゴ大学発の一学説と言うか、一イデオロギーと言って過言ではありません。1980年代のレーガン政権に取り入れられたことで一挙にアメリカで支配的となり、冷戦終了後はアメリカ自国の国益のため、世界中に半ば力ずくでばらまかれました。
それは一言で言うと、規制を片端から撤廃し、ヒト、カネ、モノが自由に国境を越えられるようにすることです。具体的には巨大ヘッジファンドや巨大多国籍企業などが、世界中を股に、いっさいの規制なしに利潤(しばしば瞬間的利益)を追い求めることを可能にするものです」
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