GPファイナル優勝「紀平梨花」はどこがすごいのか 浅田真央との違いは?

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真央にない“力強さ”を併せ持つ

――GPデビューシーズンの初優勝は、2005年の浅田真央以来という。彼女との違いは何だろうか。

杉田:真央さんとの比較は、時代もルールも違いますから単純にはできません。彼女はジュニアの頃から体の使い方が自然体で、力強さはないけれど、非常にスムーズでした。そして苦労することなく、もちろん本人は一所懸命に練習していたのですが、他の選手ほどシビアな練習を要求されませんでした。彼女の場合、教える側にとっては“できてしまうから始末が悪い”と言われたほどの才能があったからです。だからこそ、エッジでの踏み切りやスピンのルールが厳格化したときなどは、それまで自然に飛んでいたやり方を新しいルールに合わせるために苦労することにもなったのです。

――紀平の場合は?

杉田:彼女のジャンプには力強さがあり、タイプとしては伊藤みどりさん(49)に近い。だからといって、ジャンプばかりでなくなってきたのは、練習環境に恵まれたところも多いと思います。先輩には、“練習の鬼”と呼ばれる宮原がいて、それを目の当たりにしていますし、濱田美栄コーチは基本を大事に教えることで有名です。練習は嘘をつきません。才能のある子にそれが加わったら怖い物なしですよ。

――ロシア勢では、ザギトワ以外にも4回転3種(サルコウ、トゥループ、ルッツ)を飛び世界ジュニア選手権を制したトルソワ(14)が、今後のライバルになると言われる。

杉田:女子の試合で4回転サルコウを跳べたのは安藤美姫さん(30)とトルソワだけ。でも、紀平も練習では成功しています。いずれ試合でも披露することになるでしょう。ただ、いくら回転の多いジャンプを跳べたところで、結局は“質”が問われます。男子の羽生結弦選手(24)があれだけ評価されるのは質の高さです。跳ぶ前の準備、空中でのコントロール、そしてランディングに至るまでのレベルの高さが問われます。トルソワはまだ14歳ですし、紀平の得意とするトリプルアクセルは苦手とも言われていますからね。

――トリプルアクセルが紀平の武器といってよいのだろうか。

杉田:バックから前に向かって飛ぶ他のジャンプと違い、前を向いて飛んで3回転半回るアクセルは、たしかにまだ女子ではできる選手は少ない。ですが、来シーズンあたりには続々と出てくると思います。そうなると問われるのは、プラス要素があるかないかの質になる。マイナスの要素が少なく、プラス評価が高いところが紀平の武器でしょう。

――北京五輪は紀平で決まりか?

杉田:GPファイナルはたった6人だけでしたからね。世界選手権など多くの選手と闘っていませんので、まだ世界№1とは言い切れません。またオリンピックは4年に1回しかないので、実力に加えて運も必要です。世界一を3回も獲っている真央さんだって、オリンピックだけには恵まれませんでした。紀平の場合、まだ完成形ではありません。今は強くなっているときであり、その後に上手くなってくる。もちろん、期待しています。

週刊新潮WEB取材班

2018年12月10日掲載

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