「ドルガバ」を中国から追放した「ネット義和団」の愛国

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乗り遅れたら非国民

 騒動を受けて、中国人モデルが次々にボイコットを表明し、ショーは中止に。また、アリババをはじめとする通販サイトからも一斉にドルガバ製品が削除された。実店舗は営業を続けるが、

「店舗の周辺には警察が配備されて物々しい雰囲気。店に入るところを隠し撮りされて、SNSで吊し上げられる可能性もあるので誰も寄りつきません」(北京在住のジャーナリスト)

 ドルガバの昨年の売り上げは13億ユーロ(約1669億円)とされ、そのうち3割を中国が占めるという。仮に「追放」が1年間に及べば約500億円のマイナスが出る計算だ。

 一方、お国柄ゆえ、政府主導を疑う声もあったが、

「今回については中国政府の関与はないと思います。むしろ“義和団的”な動きと考えるべきです」

 とは、中国事情に詳しいジャーナリストの高口康太氏である。中国では、民衆の勢いが社会を突き動かすポピュリズム的な運動を「義和団的」と呼ぶという。

「この名称は、1900年に愛国主義を掲げて蜂起した義和団に由来します。ただ、ネット上の義和団は、今回のような騒動で“お祭り気分”を味わう一方、乗り遅れると非国民や売国奴の烙印を押されかねないという危機感も抱いている。ショーのモデルが雪崩を打つようにボイコットしたのも、取り残されたらネット上で晒し者にされるからに他なりません。SNSの普及でさらに深刻化する同調圧力という中国のリスクは、日本にとっても脅威です」

 SNSでも愛国無罪。

週刊新潮 2018年12月6日号掲載

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