電撃的「カルロス・ゴーン」逮捕劇 “カリスマ”を裏切ったインド人執行役員の正体

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「カリスマ」を裏切ったインド人執行役員

 実は、この逮捕劇の裏には、「カリスマ経営者」を裏切った側近がいた。

 司法担当記者が解説する。

「そもそもの発端は、今春、日産の監査役に対し、内部告発が行われたことでした。それを受け、社内に極秘のチームが設けられ、数カ月にわたる内部調査が行われてきました。その過程で、最も事情を承知しているゴーンの側近2人から協力を取り付けることができた。そのうえで、日産がゴーン案件を特捜部に持ち込んで、捜査が開始されることになったのです」

 ゴーンの側近2人には、この6月に施行されたばかりで国内2例目となる「司法取引」が適用された。その結果、捜査に協力する見返りに、罪が減免されることになったのだ。

 まず、その一人目は、インド系イギリス人のハリ・ナダ専務執行役員である。

 1990年、日産に入社し、その後、英国日産や本社の法務部門に長年勤務。昨年4月に専務執行役員に昇進すると、ゴーンが陣取る会長室や、法務室などの担当になった。

「ゴーンの金融商品取引法違反については、彼がまさに実行部隊でした。ゴーンとともに特捜部に逮捕された代表取締役のグレッグ・ケリーの指示を直接受け、報酬の過少記載に手を染めていたのです。また、オランダにある日産の子会社『ジーア』が、レバノンやリオなどの豪邸をゴーンに無償提供していたわけですが、その管理も任されていた。豪邸を取得するときなどは、ハリ・ナダ専務執行役員が契約の手続きを行っていたのです」(同)

 もう一人は、2年前に日産と連合を組む三菱自動車に移った、大沼敏明理事だ。

 日産時代はゴーンの側近として秘書室長を長らく務め、ゴーン用の豪邸を「ジーア」が購入すると、ハリ・ナダ専務執行役員と同様にケリーの指示に従い、本社からその代金を送金する役割を担っていたという。

 この2人の捜査協力によって、ゴーンの数々の不正行為が丸裸になった。

「ゴーンの私的流用には呆れるほかありません。豪邸を無償提供させただけでなく、そこに設置する高級家具も日産に購入させていました。さらに、家族旅行の費用のつけを回していたり、リオにあるヨットクラブの会員権も支払わせていた。また、ゴーンの姉は無償提供されたリオの豪邸に住みながら、勤務実態もないのに日産との間でアドバイザリー契約を結んで、年間約10万ドルを手にしていたのです」(同)

 ようやく、いまになって、銭ゲバのつけが回ってきたのだ。

週刊新潮 2018年12月6日号掲載

特集「新聞テレビでは分からない『カルロス・ゴーン』20の疑問」より

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