キナ臭い北方領土の“平和的”解決… 露メディアは「日本は歯舞・色丹だけでいいんだろう」

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「4歩下がって2歩進む」

「戦後の北方領土交渉は、実質的には56年の『日ソ共同宣言』が端緒になっています」

 と、改めて外務省の関係者が「北方領土交渉史」を繙(ひもと)く。

「日ソ共同宣言では、平和条約締結後に歯舞諸島と色丹島を日本に引き渡すことで両国が合意しました。しかし、国後島と択捉島についての言及はなかった。これでは北方領土は最大で2島しか返ってこない。そのため93年、エリツィン大統領との間で『東京宣言』を交わし、そこに4島全ての名前を明記することに成功した。これをもとに、日本政府は『4島返還』を求めて交渉し、少なくとも4島の帰属は日本であることをロシアに認めさせた上で平和条約締結というスタンスを取ってきました」

 ところがロシア側は、

「あくまで日ソ共同宣言が原点であるというスタンスにこだわり、日露の溝が埋まることはなかった。こうして両国が平行線を辿るなか、今回、安倍総理は『日ソ共同宣言を基礎』とすることに同意しました。長らく動かなかった北方領土交渉が動き始めたと捉えることもできますが、一方で『4島返還』の方針を捨てたとも取れ、日本国内で賛否両論が起こっているわけです」(同)

 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、

「9月の東方経済フォーラムで、プーチン大統領は『前提条件なしで年内に平和条約を締結しよう』と提案。その場で苦笑いし、言い返さなかった安倍総理に対して批判の声が上がりました。日本側の公式見解である『4島』が『ゼロ島』になってしまった格好でしたが、今回の首脳会談で安倍総理は『2島』まで戻した。いわば『4歩下がって2歩進む』という形を取り、交渉を前向きなものとして世論に受け止めてもらおうとしているのだと思います」

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