広島・丸佳浩はどこへ行く? FAで巨人入りした“大物野手8人”にみる残念な共通点

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純粋な成功例は1選手だけ?

 まず確認しておく必要があるのは、「FA行使後、巨人で本塁打数や打率などでキャリアハイを達成した選手は1人もいない」という事実だろう。

 ちなみに丸の場合、本塁打は今季18年の39本、打率は14年の3割1分0厘が、現在までのキャリアハイとなる。上の“ジンクス”が丸にも当てはまると、巨人の彼は本塁打を38本までしか打てないことになる。打率が3割1分を超えることもない。

 興味深いのは、年齢の問題ではないということだ。落合博満氏(64)のように、32歳でキャリアハイを実現し、40歳を目前に巨人へ入団したのなら、記録が下がるのも仕方あるまい。

 だが、現在は巨人の二軍でコーチを務める片岡治大氏(35)や現役外野手の陽岱鋼(31)は、当時30歳で巨人に移籍した。33歳や35歳でキャリアハイを実現させても不思議はないはずなのに、2人とも不振に悩まされた。

 その上で、8人に明暗が存在するのは事実だ。まずまずの成功例としては、現在は巨人の3軍監督を務める江藤智氏(48)が挙げられる。

 広島での最終年と比較すると、移籍した2000年は本塁打を5本も伸ばした。第2次政権の長嶋茂雄氏(82)が3回目のセリーグ優勝を果たすのに大きな役割を担った。この年の日本シリーズはソフトバンクホークス会長・王貞治氏(78)が率いるダイエーホークスとの「ONシリーズ」となり、巨人が日本一に輝いている。

 次に「前年並み」の成績を残したのは、落合博満、清原和博(51)、小笠原道大(45)の3氏。打率も本塁打数も変動は「誤差の範囲内」という成績だが、ここで考えるべき問題は2つある。

 1つ目はFA組には「優勝請負人」という役割を期待されていることだ。非常に高額な契約額は、ファンを歓喜させるために支払われる。

 そんな彼らが「前年トントン」という成績だった場合、ファンが“コストパフォーマンス”の観点から首を傾げるという状況は決して珍しくない。「FAより育成に力を入れて」と訴えるファンの数は、決して少なくない。

 2つ目は、たとえ期待されたような成績を残せなかったとしても、チームが優勝してしまえばファンの評価は甘くなるという傾向だ。8人のFA選手で、移籍1年目に巨人がリーグ優勝したケースは、なんと5例にのぼる。確率は62.5%と高い。

 例えば巨人ファンにとって、清原氏への評価は割れることが多い。それは彼が入団1年目に、チーム成績が4位と低迷したことも影響を与えているのかもしれない。広澤克実氏(56)と陽岱鋼にも同じことが言える。

 本題に戻れば、ファンを落胆させた「失敗例」は残りの4人。広沢克己、村田修一(37)、片岡治大の3氏と、現役の陽岱鋼だ。

 これを監督側から見てみると、長嶋監督の時代は成功1例、現状維持2例、失敗1例。原監督は現状維持1例、失敗3例となる。ここに指導力の差を見るかどうかは議論が分かれるところだろう。

 結論を言えば、FAの成功例は極めて少数派だ。良くて現状維持であり、8人のうち4人が入団1年目に不振に陥った。まだ30歳の丸にとって、今後キャリアハイの成績が更新できないのであれば、やはり巨人へ移籍しないほうが賢明ではないか。

週刊新潮WEB取材班

2018年11月13日掲載

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