“定年後も20年以上生きる”時代 「老後破産」が嫌ならしてはいけない10カ条 

ドクター新潮 その他 年金

  • ブックマーク

Advertisement

「たそがれ教育」

 とにかく偉そうなオジサンが嫌われるようだが、誇り高き自衛官たちも例外ではない。自衛隊には退役予定者を対象にした業務管理教育、通称「たそがれ教育」と呼ばれる研修があるのだ。

 元来、自衛隊は一般的な隊員の定年が53歳と民間企業よりはるかに早い。年金受給までまだ何年もあるので、ほぼ全員が50代で再就職するが、良くも悪くも一般企業とはかけ離れた職場では、“勘違いOB”が続出した。

 さる元幹部自衛官の話。

「パソコンが使えなかったり、10年くらい電車に乗ったことがないので切符も買えなかったり。連隊長クラスの移動は運転手付きの車で、外からの電話を取ることなんてありません。靴磨きから制服のアイロンがけ、書類の作成までお付きの隊員が行いますからね。再就職先候補の企業を訪問したある幹部自衛官が、“オレの部屋はどこだ”と言い放ち、先方が絶句したことがありました。勘違いしたままサラリーマン社会に放たれてしまうので、事前の“リハビリ”が欠かせません」

 そこで学ぶことは、新入社員のための初歩的なビジネスマナーと同じだそうで、

「挨拶からお辞儀の仕方に始まり、株式とは、役員会とは何かから会社法のことまでを外部講師がレクチャーします。またOBを招いて実社会での失敗談を聞く時間もあります。鞄を持ったまま名刺交換をしてしまったとか、接待の席で上座に座ってしまったなどのエピソードから、かつては威厳に満ちた上官が民間で四苦八苦する姿を想像しては、明日は我が身と自衛隊での“偉い自分”を捨て去る覚悟を固めていくのです」(同)

 お前は明日から何者でもない、偉くない、ということを叩き込まれるわけだ。こうした意識改革の研修は、再就職の時期を迎えたサラリーマンにも有用ではないか。

「過去の自分を脱ぎ捨て、謙虚に自分の経験を活かす努力をした方が、第二の人生で成功しやすいと実感しています。実際に、“自分を雇ってくれた会社に感謝しないといけない。これからは愛国心を愛社精神に変えよう”と奮起し、再就職先の業績をアップさせて年収が自衛官の時より数百万円上がったというOBもいますよ」(同)

 そんな彼らも我々も、共に「年金受給」に頭を悩ませることになる。果たして貴方の選択は――。

週刊新潮 2018年11月8日号掲載

特集「『75歳』の選択肢は政府の罠!? デマが飛ぶ『年金受給』は何歳が正解か」より

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。