寄生虫感染で自殺率1・5倍… 成人にもリスクがある「トキソプラズマ」レポート

ドクター新潮 医療

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 世界人口のじつに3分の1が感染しているとされる寄生虫「トキソプラズマ」。哺乳動物の細胞に寄生するこの原虫には、妊婦に感染することで胎児の脳機能に重篤な影響を及ぼす可能性がある。「感染が早い時期であれば死産や流産、遅い時期だと、水頭症や脳内石灰化、精神面での障害、視覚障害をもって生まれることがある。これを“先天性トキソプラズマ症”と呼びます」(国立感染症研究所の永宗喜三郎氏)。さらに健康な成人や小児にはほとんどが無症状とされるが、“脳を蝕む”というこんな報告も……。

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 日本でのトキソプラズマ感染者は4千万人にものぼるというが、あまりに実感が湧かないため、本誌(「週刊新潮」)でも、本当に3人に1人が感染しているかどうかを調べてみた。

 まずは、20代前半と40代半ばの男性、20代後半の女性の3名。8月から9月にかけて、東京都内の病院でトキソプラズマ抗体検査を受けた。すると、20代後半の女性に陽性が出た。ぴったり3分の1だ。

 念のため、さらに2名を追加。40代後半の男女が検査を受けたところ、40代後半の男性が陽性だった。都合、5分の2。よもやこれだけの高確率とは……。陽性が出た当人たちは、

「この2、3カ月で感染した可能性が高いとのことでした。医師からは“なにか美味しいお肉を食べた?”と聞かれました。7月にカンボジア旅行をしたと告げると、“それは怪しい。土や水からも感染するので、おそらく旅行中の感染でしょう”と言われました。結婚を控えているので、いま判明してよかったです」

 と20代後半の女性が言えば、40代後半男性は、

「カメラマンなので、仕事で世界各地へ行きました。インドやニューカレドニア、バヌアツ、フィリピン、ラオスなどなど。衛生状態の悪い国ではミネラルウォーターしか飲まないし、肉や魚も火の通ったものしか食べません。でも生肉が好きなので、レバ刺しは禁止されるまで月1回はホルモン屋で食べていましたね。あと、土いじりも好き。ガーデニングもしていますし、今年、区民農園に当たったので野菜を育てています。どこから感染したのか、まったく分かりません」

 成人や小児にはほとんど無症状とはいえ、実はこの寄生虫、健常者にも生命に関わる重大なリスクをもたらすことが指摘されている。その研究結果と具体的なケースを紹介していこう。

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