戸田恵梨香が「大恋愛」で演じる“女っぽい病人”を 辛口コラムニストが絶賛の理由

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戸田恵梨香がイイ!!

 いやいや、つらつら並べ立ててきた悪い予想の大半は外れてなかったんですよ。ただ、数々のマイナス要因をプラスに変える工夫と幸運も、このドラマには揃ってる。

 たとえば、有り余る要素がテンコ盛りの多重複合統合重合総合恋愛ドラマゆえに、複雑さ、面倒臭さ、わけのわからなさが生まれがちという難点。これは、登場人物の数を、最近のドラマでは珍しいくらい減らすことで乗り切ってる。

 なにせ主要キャラは戸田・ムロツヨシ・松岡のトライアングルに、それぞれの母親である草刈民代と夏樹陽子、捨て子だったムロツヨシの親代わりとしての上司であるサンドウィッチマン富澤たけし(44)という“親子”3組=6人のみ。それだけいればとりあえずの物語は回っていくという、シンプルな舞台劇のような絞り込まれっぷりで、「カルテット」(TBS系/17年)ならぬセクステットです。

 とはいえ、「大恋愛」で最大の想定外だったのは、他でもない、主演女優。これがいい。

 特に恥を忍ぶまでもなく告白するなら、これまでワタシ、戸田恵梨香という女優に、興味も関心もありませんでした。最大の当たり役は「コード・ブルー」(フジ系/2008年~)の若き産婦人科医であり、「SPEC」(TBS系/2010年)の若き変人天才刑事であり。最近の主演連ドラが、「リスクの神様」(15年/フジ系)であり、「リバース」(17年/TBS系)であり、前期の「崖っぷちホテル!」(日テレ系)であり。

 ジャニーズだバーニングだEXILEの臭いがキツい商品ばっかりだわ、例外の「SPEC」は同じ堤幸彦演出の「ケイゾク」(TBS系/1999年)の縮小劣化コピーのように感じられたわで、どうも食指が動きませんでした。

 今になって考えれば、いずれの責任も戸田恵梨香当人にはなかったから、ワタシ個人の喰わず嫌いということになるんでしょうが、まぁ別に後悔はしてません。「大恋愛」の戸田を見ているだけで十分だし、そのよさは「大恋愛」以外の戸田は見なくていいと思わされるほどで、まぁ見事にヒロインが作品にハマってる。

 戸田がこれまで演じてきた役では頭でっかちな変わり者や姉御肌の男まさりキャラが目立っていて、それは純然たる恋愛ドラマである今回も、基本的には変わっていない。

 収入も社会的ステータスもムロツヨシより上で、ここのところニッポン連ドラ界に多い“婚約を破棄される女”じゃなく“婚約を破棄する女”でもある点は男まさりだし、子供を抱えて離婚して仕事もない同級生の黒川智花(29)を自分のクリニックに受付として雇う点は姉御肌。医師である点は頭でっかちだし、医者を振って引っ越しアルバイターに走る点では変わり者でもある。

 が、「大恋愛」の戸田で際立つのは、女っぽくない変人というキャラクターより、恋に落ち、愛を生きられる幸福と、医師なのに自らの病の進行を止められず、恋からも愛からも遠ざかっていきかねない不幸という両極端を同時に抱え込んだ、女っぽい病人というキャラ。

 人生のピークとボトムが一度にやってきた人間をシリアスに演じるなんて、こりゃ相当の役者でも困難至極。のはずなんだけれど、戸田は今回、それを濃すぎも薄すぎもしない適度適切な濃淡緩急でやってのけてる。

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