NHKが突如「受信料値下げ」を表明、視聴者不在の極めてうさん臭いウラ事情

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“みなさまのNHK”が受信料の値下げを検討している。もし実現すれば、2012年10月に8・9%(月額120円)値下げして以来、NHK史上2度目の値下げとなる。

 果たしていくら値下げするのか、そして受信料の適正料金は?――放送業界に詳しい上智大学・文学部新聞学科の音好宏教授に聞いた。

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――いまやNHKの受信料収入は6900億円余り(2017年度決算)で、民放No.1の日本テレビの売上(およそ4200億円)の1・5倍を超える収入である。しかも、NHKは4年連続で過去最高の収入を更新しており、とくに昨年(17年)12月の最高裁判決で受信料制度が合憲とされてからは、収入が大幅に増えている。
 それゆえ、NHKの上田良一会長は、値下げの理由を「受信料収入が堅調で、収入にゆとりがあるから」と説明した。現在の受信料は、地上波のみの契約で月額1260円だ。1000円を切るくらいでないと、視聴者に値下げ感はないのだが……。

音好宏教授:ハッキリ申し上げると、いくら下げれば適正か、などといった考えはNHKにはないと思います。受信料を値下げすることが視聴者にとってのメリット云々ということではなく、関係する“プレイヤー”たちのそれぞれの思惑の中で受信料の値下げという話が進んでいると見るべきだと思っています。

――いったいどういうことなのか。

:NHK側からすれば、2000年代のはじめから検討を進めてきたネット上での“常時同時配信”、つまり番組をネットでもそのまま同時配信しようというもので、これを進めたい。ただし、現行の放送法では、災害時など特別なケースを除いて、NHKが24時間配信することは認められていません。そこで、受信料の値下げと引き替えに、法改正を認めてもらおうというものです。

――なぜネット配信の引き替えが、受信料の値下げとなるのか。

:値下げが、“常時同時配信”に必要な条件の一つとして総務省から指摘されていたからです。16年、高市早苗総務相の時に、NHKは常時同時配信を表明し、イケると踏んでいたはずです。しかし、新聞業界や民放連のみならず、与党サイドからも思わぬ反発を受け、高市総務相からは「(視聴者に)利益を還元するという観点がない」と批判された上に、3条件が出されたのです。つまり、(1)常時同時配信を放送の補完として視聴者から十分支持を得て実施、(2)NHKの既存業務が公共放送として適正か検討、(3)子会社のあり方について抜本的な改革、というもので、NHKのネット配信は据え置きとなっていたわけです。そこで、最も目立つ、視聴者還元の値下げをするから、法改正してくださいというわけです。

――いまになって、配信への意欲を再び見せているのはなぜなのか。

:2020年の東京五輪です。2020年までに4K8K、さらにネット配信をも実現させるには、今認めてもらわなければ間に合いません。その次のオリンピックなんていつになるか分かりませんからね。2020年というメルクマークを持ち出せば、少しでも前に進めるというのがNHKの思惑でしょう。さらに安倍内閣の規制改革推進会議が、今年6月4日にまとめた答申が、「NHKの同時配信の是非について早期に結論を得る」と容認姿勢をにじませたことも大きいでしょうね。

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