女房子どもの人権も認めない「暴力団排除」 過剰な締め付けが行きつく先は

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半グレの勢い

「条例や条項の定めで、暴力団を辞めても5年経つまでは、社会生活に必要な諸々の契約ができません」

 とは、『続・暴力団』(新潮新書)などの著書があるノンフィクション作家の溝口敦氏だ。

「銀行口座がなければ、給与の振込もできないのでまともな仕事に就くのは難しい。子どもの給食費を納めるのも現金になるので、“アイツの親はヤクザだ”と学校で噂になるかもしれない。本来は暴力団の活動を制限することが目的の条例の筈が、辞めた後の社会復帰まで難しくしており、矛盾していると言わざるを得ません。私は彼らの存在を擁護するつもりは一切ありませんが、これほどの締め付けは、もはや基本的人権を否定していると言っていいと思います」

 その結果起きること。それは即(すなわ)ち、新手の犯罪の横行だと溝口氏は続ける。

「正業に就く途が閉ざされたとなれば、犯罪集団に再び入れと言っているに等しい。条例や条項で暴力団の数は減らすことはできても、組織犯罪集団、いわゆる半グレの勢いは増しています。彼らは暴力団のように公然と名乗って活動しませんから、警察も確固たるデータを持っておらず摘発も難しい。詐欺は半グレの中心的な収益源で、恐喝はヤクザの代表的なシノギですが、ここ数年の発生件数をみても、恐喝が減っている代わりに、オレオレ詐欺などの犯罪が増加しています」

 また一つ、警察の“シノギ”が増えたワケだが、そのツケを払わされるのは相も変わらず無辜(むこ)の民なのだ。

週刊新潮 2018年10月18日号掲載

特集「過ぎたるは及ばざるがごとし」より

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