柔道団体戦 世界選手権は“金”でも東京五輪は“黄信号”のワケ

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 柔道世界選手権の「男女混合団体」で日本が大会連覇を果たした。

 男女各3階級の計6試合で勝ち星を競うこの種目、五輪では2020年東京大会で初めて採用される。

 当然の如く、東京でも楽勝で金メダルが獲れると思っている向きも多かろうが、あにはからんや、である。

「選手権と五輪ではルールが違うのです」

 とは全日本柔道連盟幹部。

「選手権は“団体戦のみ出場する選手”を認めていますが、五輪は“個人戦の選手のみ”でチームを編成しないといけないのです」

 では今大会はどうだったか。強豪フランスとの決勝の戦いぶりを見てみよう。

 1人目は男子100キロ超級3位の原沢久喜、2人目は女子57キロ級金の芳田司が勝利した。だが3人目の男子73キロ級は、個人戦で負傷した橋本壮市に代わり、団体戦要員の立川新が出場。勝つには勝ったが、4番手の女子70キロ級は個人金の新井千鶴が故障で、銅の大野陽子が出て敗退。5番手の男子90キロ級も個人銅の長澤憲大が故障し、代役で団体戦要員の向翔一郎が出場した。結果、4-1で団体Vとなったが、4勝のうち2勝は、五輪で認められない“代役”の勝利だった。

「五輪では、当該階級の選手が欠場する場合、下の階級の選手が代役になる。73キロ級の正選手が欠場すれば、66キロ級の選手が73キロ級の相手と戦うのです。今大会のルールでは日本は“層の厚さ”で勝てましたが、五輪は“層”ではなく選手個々が“いかにケガをしないか”が肝要です」

 個人戦で勝ち進めば、その分ケガのリスクは高まる。そもそも日本は国内選考のレベルが高く、そこで故障してしまうこともある。強さがネックなのだ。そして、

「当然ながら、選手たちは個人戦に全精力を注ぎますが、そこで敗れても団体戦で気持ちを切り換えないといけません。個人戦で3回戦敗退し、団体戦の準々決勝でも黒星を喫した小川雄勢は“切り換えられなかった”と弁解しましたが、それじゃダメ。メンタルの強さも求められます」

 勝って道着の帯を締めよ。

週刊新潮 2018年10月11日号掲載

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