大阪府警の無能さを知らしめた「樋田淳也」容疑者の逃避行 “余裕”感じさせる自転車旅

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「道の駅」が兵站基地だった「富田林署の樋田淳也」逃走ルート(1/2)

「逃げる」――。その行為に人は疾(やま)しさ、後ろめたさ、そしていつ捕えられるか分からない恐怖を覚えるものである。だが、大阪府警富田林(とんだばやし)署から逃走していた樋田淳也容疑者(30)にそれは感じられない。いやむしろ、物見遊山を思わせる「余裕」さえ漂ってくるのだった。

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「ここの土地は何が美味しいの?」

 樋田容疑者は立ち寄り先で地元の人にこう語り掛けていた。

「いま休職中で、この旅が終わったら復職する予定なんだ。上司も理解してくれていてね」

「逃走犯」のイメージとは異なる能天気さ。周囲からは観光客に見えたに違いない。少なくともそこに悲壮感はない。追手である警察を、そして世間を嘲笑(あざわら)っていたのかもしれない――。

「樋田容疑者確保」は偶然の産物による「ラッキー」に過ぎなかった。それは、大阪府警による捜索がほとんど意味をなしていなかったことを意味する。つまり、強制性交などを繰り返した樋田容疑者が「野放し」になっているという恐怖に怯えながらの生活を、我々は今後も余儀なくされていたかもしれないのだ。警察は完全に裏をかかれていたのである。

「住民に多大な不安と心配をかけ、お詫びします」

 樋田容疑者が万引きした疑いで現行犯逮捕された翌日の9月30日未明、大阪府警の広田耕一本部長は頭を下げた。しかし、約25分の記者会見で、彼が口を開いたのはこの時だけ。後は同席した捜査1課長が喋るばかりで、警察署から凶悪犯を逃走させてしまうという大失態を犯した府警の「反省度合い」の深さは伝わってこなかった。

「樋田が見つかって、大阪府警は浮かれているようにすら感じられます」

 こう呆れるのは、府警の関係者だ。

「なかには、暢気(のんき)に『台風(24号)が直撃する前で良かった』と漏らす幹部もいたほどです。自分たちの力で樋田を見つけたわけでも何でもないのに」

 こうして府警の無能さを知らしめ、48日間にわたって逃避行が続けられた「樋田事件」を振り返ってみる。

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