大杉漣さん最後の主演作 “死刑囚”烏丸せつこの熱演

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 今年2月に66歳で急逝した大杉漣。彼がプロデュースも担った、最後の主演作「教誨師(きょうかいし)」が、10月6日から公開となる。

 大杉演じる牧師の教誨師“佐伯”が、世代も境遇も異なる6人の死刑囚と対面し、彼らの人生を炙り出す。全編の8割方が「教誨室」という小さな空間での会話劇で、6人はいずれも殺人者だが、ただ何人をどう殺(あや)めたかは教誨師との会話からは明らかにならない。

 死刑囚役には、光石研、古舘寛治ら個性派が揃う中で、紅一点が烏丸せつこ(63)だ。元美容師、関西弁を捲し立てる饒舌な中年女“野口”を演じる。

 監督の佐向大(さこうだい)氏はいう。

「物怖じせず佐伯に接してくる“大阪のオバチャン”という設定。どこか不気味な役を存在感たっぷりに演じてくれました。彼女、2013年放送のNHKスペシャル『未解決事件』で、“尼崎殺人死体遺棄事件”主犯の角田美代子役で出ており、それに何ともいえぬ凄みを感じたんです。“烏丸さんしかいない”と、大杉さんと意見が一致しました」

 烏丸は、1980年の「四季・奈津子」で主役デビューすると、肉感的でしかも脱ぎっぷりのよさが制作者を刺激してきたのだった。

「今ではどんな役でもこなせる、ベテラン女優です」

 そう語るのは、映画評論家の北川れい子氏。

「今回は“和歌山カレー事件”の林眞須美死刑囚を思わせる役どころ。全てを自己正当化してしまう嫌らしい存在ですが、彼女が演じると人を喰った愛嬌がある。ただ一度、心を許した佐伯に裏切られたと思い込み激昂する場面があるんですが、迫力に思わず唸らされました。今年の助演女優賞を彼女にあげたい思いです」

 烏丸の熱演を引き出し、さらば大杉漣――。

週刊新潮 2018年10月4日号掲載

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