データで読み解く「27時間テレビ」がオワコンといわれる理由 フジのピンチは続く?

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24時間 vs 27時間

 長時間特番を先に始めたのは日テレだった。開局25周年特集として、『24時間テレビ「愛は地球を救う」』を1978年にスタートさせた。
 ところが当初は、局内外から反対の声が怒涛のように押し寄せた。当時のスポンサーは1社提供が普通で、複数社方式に難色を示したのだ。局内でも週末のGP帯(夜7~11時)は番組が固定されており、特番のための変更は受け入れられないと各番組が反対した。ところが逆風を押して放送してみると、24時間の平均視聴率は15.6%に及んだ。募金も12億円近く集まり、翌年以降も継続となった。

 ただし2回目以降の数字は下落傾向となった。1桁が7回。1991年には、今年のフジ27時間テレビを下回る歴代最低の6.6%を記録した。

 そこで日テレは、翌92年に根本治療に出た。エンターテインメント化を図ったのである。福祉色の強い番組から、音楽やドラマなど娯楽色を強めた。さらにチャリティーマラソンをスタートさせ、特番に太い縦軸を作り、ラストに“感動”を用意した。

 かくして平均視聴率は2桁に乗るようになった。平均視聴率の最高は05年の19.0%。募金の最高は、東日本大震災があった2011年の19億8600万円と、いずれも改革後に来ている。

 この24時間テレビに対抗したのが、フジの長時間特番だった。スタートはバブル真っ最中の1987年。初回から歴代最高の19.9%を弾き出した。以後タイトルは時々変更され、やがて『FNS27時間テレビ』となった。

 平均視聴率では、当初7回が日テレを上回った。1982年からのフジ“12年連続三冠王”と時代が重なる。ところが三冠王から脱落した94年に逆転されると、その後はほとんど勝てなくなる。今世紀に入っても、04~10年はフジが三冠だったが、局の総力を挙げたはずの特番は水をあけられたままだった。

 フジは去年から、リニューアルに踏み切った。生放送を辞め収録を基本とし、さらにバラエティ色を弱め、教養路線とした。ところが視聴率は歴代ワースト2位の8.5%。「想像絶する“つまらなさ”…延々たけしの下らないギャグ&歴史ネタ」と厳しい声が続出した。

 食をテーマにした今年は、さらに歴代最低の7.3%に沈んだ。これで日テレに、3年連続でダブルスコアの大差をつけられた。このままでは東京オリンピックが開かれる2020年に、5%割れをしてしまうかも知れない。

 根本治療を施した92年の日テレは、視聴率を歴代最低の6.6%から17.2%と3倍近くの改善に成功した。一方フジテレビは、大幅修正したのに下落傾向は止められなかった。同局の修正力のなさが露呈した格好だ。

27時間テレビのオープニング

 では、今年の内容を検証してみよう。

 番組のテーマは「にほんの食」。日本の食材や料理など題材に、日本の現在・過去・未来を俯瞰する構成だった。

 ところがオープニングから頂けない。インテージ社のMedia Gauge(https://www.intage.co.jp/service/platform/mediagauge-tv/)は、東京都内でインターネットに接続されたテレビ約8万台の1分毎の接触率を調べている。これによると、土曜夕方6時半に始まった27時間テレビの冒頭30分の平均は5.3%しかなく、日テレの6.8%に及ばず、TBSの5.2%といい勝負だった。(図2)

 スタジオセットにお金をかけ、有名タレントを並べた豪華絢爛たる大特番のオープニングだ。ところが他局の通常番組の中に埋没するとは、如何に27時間テレビが注目されていないかわかる。

 そもそも6時30分スタートは正解だったのか。Media Gaugeの接触率でみると、この日は6時30分から7時までで、地上波テレビ全体の接触率は2.7%上がった。それでも7時の時点で27.8%に留まる。

 これが8時には31.7%、9時31.4%、10時31.2%、10時30分30.4%と推移した。つまり6時30分時点では、まだ家に帰っていない人がたくさんいたようだ。

 もし7時スタートで日曜10時30分頃の終了としたら、テレビを見ている人の数はもっと多かっただろう。早すぎるスタートが裏目に出たと言わざるを得ない。

土曜夜の成否

 次の課題は、土曜夜帯という特番に勢いをつける序盤戦。

 オープニングの後を受け、7時頃から9時頃までは『FNS対抗!メシの祭典』約2時間が編成された。FNS27局からアナウンサーと各地にゆかりのあるタレントが集められ、「食」にまつわるご当地自慢トークバトルが展開された。

 ところが東京での接触率は6.4%。冒頭30分から少ししか上がっていない。通常番組だった裏の日テレは6.8%だったので、やはり大型特番はここでも、通常番組を凌駕できなかった。

 しかも当コーナーの後は、さんまの番組が2つ続いた。こちらは深夜0時までの平均接触率が8.5%と高かった。ライバル日テレの通常番組は6.1%に留まったので、ここで初めて全局トップとなった。

 バラエティ番組では、多少構成を無視しても面白い順に並べろという鉄則がある。もし『ホンマでっか!』を先にしていたなら、両番組とも数字がもっと高かった可能性がある。強い『ホンマでっか!』は、よりテレビを見ている人の多い時間帯ゆえ数字をより集め、後に続いた『メシの祭典』も高い数字で始まる分有利になる。しかも『ホンマでっか!』でお笑いモードが高まったため、多くの視聴者がより面白く感じた可能性がある。
特番全体をどう構成するのか、頭で考えた編成の敗北であり、「楽しくなければテレビじゃない」の感性で並べれば、結果は異なったかも知れない。感性より理性優先は、テレビの姿勢としては劣化と言えよう。

接触率急落は致命的!

 さらに致命的なのは、日曜午後~夜だ。同じ番組の中で、接触率が急落している。例えば日曜午後2時半過ぎに始まった『メシの祭典』2回目。5%台半ばだった接触率が、3時半から45分にかけて2%も急落した。
 同じく日曜夜7時頃からの『にほん人は何をたべていくのか にほんの食遺産』は、直前の『サザエさん』で10%あった接触率を、最初の30分で4%も失った。

 もちろん急落という現象は他局にもある。この日で言えば、TBSは8時前後で起こった。日テレも9時前後で、接触率は17%から7%へ落ちた。ただしこれらは番組が代わった部分で、特に珍しくはない。

 ところが27時間テレビでは、同じ番組の中で急落が起こっている。明らかに演出の失敗だ。

 実際に『にほんの食遺産』を分析してみると、初歩的なミスとわかる。
 未来に残していくべき“食遺産”がコンセプトだが、急落の二十数分間は並列的な紹介3連発だった。にほんの食文化を守る「人間食宝」のうち、3人に密着したコーナーが並べられたが、ここで多くの視聴者が興味をなくした。1つ1つのコーナーが地味だったということもあろうが、最大の過ちは並列3連発だ。

 音楽・映画・番組など、時間軸に沿って要素が並ぶ表現では、受け取る側は縦軸が明確でないまま並列を幾つも並べられると飽きてくる。“一つ・二つ・三つ=たくさん”の法則と業界では呼ぶ人がいるが、要はストーリーとして展開しない並列は、受け手にとっては極めて退屈なのである。

 これは番組制作の基礎として、若い頃に教わることだ。ところが『にほんの食遺産』では、「人間食宝」の他にも、出演者3人が未来に残したい食を並列的に紹介する。もはや並列3連発に何の疑念を持たない演出だ。

 かくして27時間テレビのフィナーレともいうべき最後の番組は、接触率6.3%という凡庸な数字に終わった。裏の日テレの同時間は12.0%。通常番組にダブルスコアをつけられた特番の断末魔のようなラストだった。

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