日本初の“受刑者専用”求人誌「Chance!!」 女性編集長が創刊の意義を語る

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ヤメ暴はOK

 1社目は、これまで500人以上の出所者を雇用してきたことで知られる、北海道の建設会社、北洋建設だ。小澤輝真社長の顔写真の横には、「代表者メッセージ」としてこうある。

〈……3食付きの寮を用意しているほか、生活が安定するまでの間、毎日2千円を現金で渡しています。手元にお金があれば気持ちに余裕が生まれて、再犯が激減しますから。札幌駅から2.9キロ、おそらく皆さんが住んでいたところからは遠く離れた場所にあるため、昔の悪い友人とはもう会わないということで、仮釈がつく場合もあります。どこの刑務所にいても私が面接をしますし、出所日は、当社までの交通費も支払います。ウチの会社で一生懸命働けば、お金も稼げるし、必ず人生をやり直すことができます。〉

 そして、採用職種、給与、待遇……などに合わせて、【採用できない罪状、病気等】も明記される。ちなみに北洋建設では〈てんかん、婦女暴行、放火、暴力団関係者(ヤメ暴はOK)〉とある。

三宅:建設業では、高所に上ったりするので、突然意識がなくなったりすると本人ばかりでなく同僚にも危険が及ぶことがあるので、てんかんは認められないことが多いですね。また、薬物系は依存症の問題もあるし、現場で広められてしまう可能性があるので、採用しないケースが多い。

 求人広告は全部で15社。一般の求人誌と比べると極めて少ない。

三宅:どこもかしこも、というわけにはいきませんからね。こちらからの営業活動も止めたんですよ。「雇ってくれませんか」と勧めるよりも、向こうから「ウチで!」と言ってくれるような企業でないと続かない。企業数は徐々に増えてくれればいいと思ってます。

 3月から3号を発行して、応募は30人以上。これまで採用が決まったのは13人という。

三宅:最初の1カ月は、まったく動きがなかったんです。850部つくって、関東の刑務所や少年院など18施設に送付したのですが、どこからも応募がなかった。閲覧できるようなシステムになっていないと思います。受刑者支援団体の力を借りて、そこから150人の受刑者に直接送付するようにしたんです。すると、応募が来るようになってきた。2500部刷った2号では別の受刑者支援団体にお願いして、800人の受刑者に直接送付、さらに全国の刑務所や少年院など240施設に送付したところ、少年院の職員からもポツポツと連絡がくるようになりました。3号は3000部のうち1500冊を直接送っています。応募してくる人の年代は40代~50代が多い。若い人は引く手もあるし、親元も頼れることが多いですから。本人にやる気さえあれば……。

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