日本軍に美人少佐? 鬼畜兵が中国女性を緊縛! のコメディ 爆笑「中国抗日ドラマ」対談

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「中国抗日ドラマ」は爆笑コメディ――西谷格×岩田宇伯(1/3)

 9月3日は中国では抗日戦勝記念日とされる。大規模な行事は行われなかったが、反日ドラマという形のプロパガンダ政策は根深いままだ。史実無視で、もはや爆笑コメディの域に到達したこのジャンルをウォッチャーと出演歴のあるライターが対談で解き明かす。

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西谷 中国大陸全土で毎日のようにテレビ放送されている「反日ドラマ」。現地では「抗日電視劇」と呼ばれ、老若男女問わず幅広い人気を集めていますね。史実無視の荒唐無稽な内容も少なくありませんが、全容はなかなか判然としません。そこで、『中国抗日ドラマ読本』の著者である岩田宇伯(たかのり)さんにご登場いただくことにしました。反日ドラマの撮影現場にライターであることを隠し、俳優として潜りこんだ経験のある私が聞き手となり、あれこれ引き出したいと思います。岩田さんが反日ドラマと出合ったきっかけから伺えますか。

岩田 はい。2013年頃から仕事の関係で上海へしばしば出張に出かけるようになりました。最初の頃、南京西路という繁華街で「ニホンゴ、ハナセマスカ? オチャ、ノミマショ」と片言の日本語で話しかけられ、あやうく詐欺に遭いそうになりまして。

西谷 そうやってむちゃくちゃ値段の高い店に連れて行かれるんですよね。

岩田 そうです。いま私55歳ですけれど、歳取ってくると「これはマズいな」と敏感になってアラームが作動するものですから。

西谷 逆にアンテナが働かない人が多いからそういった詐欺が横行しているというのもありますね。それはともかく……。

岩田 ええ。これは語学を勉強しないといかんと思い、駐在スタッフに聞いたら「ドラマが手軽でいいですよ」と。それで滞在先のホテルでテレビをつけたら、「抗日奇侠」(画像1)をやっていたんです。

西谷 岩田さん一押しの作品ですね。従来の日中戦争における抗日劇にカンフーを絡ませた娯楽劇。日本兵を素手で引き裂くとか、手榴弾を飛行機に命中させるとか、そのトンデモなさが話題になった反日ドラマの金字塔と言われています。

岩田 そうなんです。完全に物理の法則を無視した動きで、中国版「マトリックス」とも言える。日本側の登場人物に「杉木純子」という美人少佐が出てきたりして、歴史考証もメチャクチャなんですよ。日本軍に女性軍人なんていませんから。でも、杉木少佐は武道の達人で、対する中国側も空中殺法や刺繍針を使った中国拳法の必殺技を持っており、戦隊ヒーローもののような作風に仕上がっている。あと、悪役の連隊長が「土肥原」という役名でして、「土肥」を中国語で読むと「土匪」と音が同じ。山賊の意味なんですが、細かいところにも凝っているなぁと思ったものです。

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