iPS細胞治療の最新フェーズ 「がんを殺す」細胞を無限量産、腎臓まるごと再生で「人工透析」不要に

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不治の病に「iPS細胞治療」の最新フェーズ(2/2)

 iPS細胞を使った再生医療への研究が本格化し、今年は大きな進展が幾つもあった。神経細胞をiPS細胞によって増やすパーキンソン病治療、iPS細胞を応用した“シート”を用いた心臓病治療の例を前回紹介した。

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 iPS治療で一筋の光明が射した心疾患は、日本人の男女の死亡原因2位だが、1位は国民病といわれる「がん」である。

 そんな「がん治療」にもiPS細胞が応用できる可能性を示した論文が、今年5月に米国の科学誌に発表された。

 iPS細胞を介して、がん細胞を攻撃する細胞を作ることに成功したというのだが、

「希望も含めた言い方をすれば、将来的にはどんながんでも、iPS細胞技術で治療ができるようになると思っています。高齢者の方で手術に耐えうる体力がなく、抗がん剤も効かず諦めている患者さんにも、治療が提案できるようになるのではと期待しています」

 そう語るのは、論文を発表した京都大学iPS細胞研究所の金子新准教授だ。

「元々は白血病など血液のがんの免疫治療に向け研究をしていたのですが、特にがんを認識するT細胞を治療に応用できないかと研究してきました。このT細胞の中には、分裂すればするほど、がんを殺す攻撃力が強くなるものがある。けれど、この細胞は分裂を重ねることで『若さ』を失い、一度でもがんを攻撃したら死んでしまう前衛隊のような存在になるんです。この強力なT細胞を、どうにか死ぬ前に捕まえて増やせないかと考えていたのです」

 がん患者は免疫力が低下し細胞の働きも弱い。そのため、攻撃力の強いT細胞を持っていても、体内でがんに対抗するまでの数をもつには限界があるのだ。

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