選手生命より日程優先の甲子園――矛盾する「朝日」社説、せめて大会期間の2日延長を

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高野連会長は…

 高野連の八田英二会長に聞いてみた。

「熱中症の問題もありますので、今後、高野連でもいろいろと検討していきます。投球制限には、投手の数が多いところ少ないところがあり、賛否両論があります。しかし、特に健康の問題は、常に私どもが考えていかなければならない大きな課題だと痛感しております」

 せめて大会期間を2日延ばして休養日を増やし、最後の連投を「7日間4試合」に持っていけないのか。

「それも一つのプランだと思います。いろんな可能性を含めて今後、真摯に検討していきたいですね。選手の健康を守るということを、私たちは一番大事に考えたいのです。ただ、いろいろと複雑な条件が絡んできますので、甲子園球場とも話さなければならない問題です。今後、熱中症対策も含めて、選手の健康第一で検討していきます」

 金足農・吉田輝星投手の熱投を決して「美談」で終わらせず、高野連には、是非、この地獄の日程改革に着手して欲しいものである。

 今大会、高野連は、創志学園の西投手のガッツポーズを注意したり、吉田投手のゲン担(かつ)ぎの日本刀抜きポーズにも「パフォーマンスはダメだ」と禁止を言い渡した。相変わらずの不毛な「規制」と「介入」と言うほかない。まるで霞が関の官僚たちが、不必要な規制や介入で各業界に対して自らの存在意義を誇ろうとするかのようでもある。

 その一方で、このまま過酷日程を改革できないなら、高野連には、

「甲子園は、ピッチャーを何人も集められる野球学校のための大会ですから、それ以外の学校は出場しなくて結構です」

 と宣言して欲しいと思う。いっそ、その方が余程すっきりする。

(文中敬称略)

門田隆将(かどた・りゅうしょう)
ノンフィクション作家。1958(昭和33)年高知県生まれ。中央大学法学部卒。雑誌メディアを中心に、政治、経済、司法、事件、歴史、スポーツなどの幅広いジャンルで活躍している。著書に『甲子園への遺言』『敗れても敗れても――東大野球部「百年」の奮戦』などがある。

週刊新潮 2018年9月6日号掲載

特集「『吉田輝星』の『連戦連投881球』は美談か 『高野連』が金の卵を破壊する――門田隆将(ノンフィクション作家)」より

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