罹患者500万人に福音! 「アルツハイマー」を超音波で治療 5年以内をメドに実用化めざす

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マウスを用いた実験

 また、アルツハイマー病も、アミロイドβの蓄積だけが問題なのではなく、血流の低下が認知機能低下の原因の一つになっていることが分かってきたという。

「そのため、超音波によって脳の循環障害が改善すれば、認知症に効果があるのではないかと考えたのです。早速、マウスでの実験に取りかかりました。この研究では、マウスの両側頸動脈をつよく縛り血流を低下させて、脳血管性認知症のモデルとなるマウスを作ります。このマウスの脳に超音波を照射すると、血管が新生されて血流が回復し症状が改善したのです」

 また、遺伝子操作によって作成したアルツハイマー病のマウスでも、超音波治療による同様の効果が得られたという。

「マウスに限らず、人間でも、記憶を司る海馬にアミロイドβが蓄積することで、アルツハイマー病を発症すると言われてきました。しかし、アルツハイマー病のマウスの脳を調べてみると、海馬だけでなく、大脳皮質、視床などにもアミロイドβが大量に蓄積していました。そこで、私は、超音波を全脳照射する方法を考えつきました。実際に、血流の改善と同時に、アミロイドβの顕著な減少をも確認できました。世界で初めて、アルツハイマー病を根本的に治せる可能性が出てきたのです」

 病状の改善は、マウスの行動にも現れた。

「アルツハイマー病のマウスに迷路実験を行うと、ウロウロとして、どこに行ったらいいか分からない状態に陥ります。しかし、超音波治療を行うと、行き止まりを記憶し、再び迷い込まないようにしながらゴールに短時間で辿り着けるようになったのです」

 この超音波治療法でアルツハイマー病を含め、認知症の多くを治療対象にできることになる。

 では、超音波が認知症に効果を及ぼすメカニズムはどのようなものなのか。

「脳、心臓、あるいは他の臓器でも同じなのですが、超音波を当てると血管内皮細胞の細胞膜が振動します。この物理的刺激を細胞膜に存在する特殊な複合体が感知し、化学的シグナルに変換して核まで伝える。すると、一酸化窒素合成酵素や血管内皮増殖因子などが発現し、結果的に血管新生が生じることを確認しています」

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