心臓病、動脈硬化、アルツハイマーも“衝撃波”“超音波”で治療 東北大教授が解説

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罹患者500万人に福音! アルツハイマーを超音波で治す(1/2)

 アルツハイマー病の患者は、現在、増加の一途を辿っている。1999年に約3万人だったものが、2014年には約53万人と20倍近くに激増し、もはや認知症患者全体の約8割を占める。治療を受けていない潜在的な患者も含めると、その数は500万人に膨れ上がると見られている。

 これまでに有効な特効薬は見つかっておらず、もし発症すれば打つ手がないのが現状だった。

 しかし、画期的な治療法が見つかったかもしれないのである。それは、薬物を服用するのではなく、“超音波”を使った治療法だという。

 一体、“超音波”のどこにアルツハイマー病に効く秘密があるのか。

 7月23日から、研究チームを率いて超音波治療法の臨床試験(治験)を開始した東北大学の下川宏明教授に解説していただこう。

「私は、循環器内科医ですが、なぜ、アルツハイマー病治療の研究を始めたのか、という経緯からお話ししようと思います。私は20年近く前から、音波を使った心臓病の先端治療の研究を行ってきました。そして、01年から開発を始めたのが、“低出力体外衝撃波治療”というものでした」

 重症の狭心症では、動脈硬化などによって心臓の動脈が詰まり、ステント(血管を拡張させるための医療器具)さえ入らない場合も出てくる。その際、最後の手段として試されるのが、血管新生療法だ。

「これまで、血管内皮増殖因子等の遺伝子を直接、心臓に注射で打つなどの治療が行われてきました。しかし、明確な効果は得られていません。一方、iPS細胞やES細胞などを用いた細胞治療の研究も盛んに行われていますが、私は細胞治療でも生体内で効果的に血管を増やすのは難しいと考えています。そこで、血管新生の新たな方法として、物理的な刺激を与えることで、患者の自己修復能力を活性化させるということを考えつきました」

 物理的な刺激として、最初に目を付けたのが“衝撃波”だったという。

「衝撃波は、雷の鳴る時やジェット機が通過する時などに発生しますが、医療では尿管結石や腎結石を体外から破砕する結石破砕治療に使われています。01年、イタリアの研究グループが、血管の最も内側にある内皮細胞に低出力の衝撃波を照射すると、一酸化窒素が産生されることを明らかにしました。私はそれを聞き、低出力衝撃波を用いた血管新生療法を着想しました。それは、一酸化窒素が、優れた血管新生作用を持っているからです」

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