アジア大会「女子レスリング」金メダルゼロの惨敗 原因は「栄和人」前監督の不在

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 まさかの金メダルゼロ――。アジア競技大会での女子レスリングである。「霊長類最強女子」と謳われた吉田沙保里(35:至学館大学)も、女子史上初の五輪4連覇の伊調馨(34:ALSOK)も不在なのだから仕方がないと思う方もいるだろう。だが、彼女たちの後継者は育っていたはずだった。日本レスリング協会の栄和人・前強化本部長(58)が伊調馨選手へのパワハラで今年(2018年)4月に辞任して以来、初の国際的な舞台だった。騒動の主が去り、落ち着いて戦えたはずではなかったのか。

 女子レスリング界で何が起こっているのか。ジャーナリストの粟野仁雄氏がレポートする。

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 ジャカルタのアジア競技大会。水泳、バドミントン、ソフトボールなどが盛り上がる中、女子レスリングが金メダルゼロに終わった。中でもリオ五輪63キロ級で金の川井梨紗子(23:ジャパンビバレッジ)が62キロ級に出場し、フォール負けで3位に終わったのは衝撃だった。今は社会人だが、至学館大学の栄和人元監督の教え子だ。68キロ級の源平彩南(22:至学館大学)も栄元監督の指導により、劣勢でも最後まで攻撃をする力をつけていたが、メダルに届かなかった――。

 確かに今回、吉田と伊調は参加していない。それは昨年(17年)、パリで開催されたレスリング世界選手権も同様だった。そして2人がいなくとも、4つの金メダルと銀と銅を1つずつ獲得。後継者は育っていたはずだった。

【2017世界選手権・成績】※年齢は現在のもの
48キロ級 金メダル 須崎優衣(19:安部学院高校)
53キロ級 銀メダル 向田真優(21:至学館大学)
55キロ級 金メダル 奥野春菜(19:至学館大学)
60キロ級 金メダル 川井梨紗子(23:ジャパンビバレッジ)
69キロ級 金メダル 土性沙羅(23:東新住建)
75キロ級 銅メダル 鈴木博恵(31:クリナップ)

【2018アジア競技大会・成績】
50キロ級 銀メダル 入江ゆき(25:自衛隊)
53キロ級 銅メダル 奥野春菜(19:至学館大学)
57キロ級 銅メダル 坂上嘉津季(25:ALSOK)
68キロ級 5位   源平彩南(22:至学館大学)
76キロ級 銀メダル 皆川(旧姓・鈴木)博恵(31:クリナップ)

 アジア大会は、銀メダル2つ、銅メダル2つは取ったが、金メダルには手が届かなかった。言うまでもなく、この大会は世界の強豪が集まる大会ではない。去年の世界選手権と比べれば惨敗と言われて当然だろう。

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