“カタカナタイトル”ドラマを一気に斬る!! パート(2)(TVふうーん録)

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 先週に引き続き、この夏キツイカタカナドラマを。

 今期最も夏っぽさ全開の青春ストーリー。不器用な女子高生たちがチーム作りから始めて、チアダンスに挑む。心病んでる大人まで巻き込んで、ひと夏の思い出作りに全力投球。たぶん、誰かがケガをする、友情に亀裂、協調性に欠ける娘が起こすいざこざ、空中分解寸前。でも、たぶんやり遂げる。達成感はある。勝てなくてもいいんです。汗と涙と弾ける若さ、拙い方言に、目を細めて絶賛するオッサンが続出するんだろうなと容易に想像できるのが「チア☆ダン」(TBS)だ。

 主演の土屋太鳳(たお)は芝居もうまいし、めちゃくちゃ可愛いし、動きにキレがあるし、柴犬がものすごく似合う。柴犬が似合うってなかなかいないよ、若手女優の中では。彼女のアクションは本当に美しいので、今回は適役だとは思う。もうひとり、石井杏奈もいい。何かと黒いLDH仕込みのキレキレダンスで、踊る筋肉をちゃんと持っている女優だ。彼女たちの運動神経のよさを愛でたい気持ちはある。早くチアダンスを完成させて、完璧に踊ってほしい。でも、そこに辿り着くまでのストーリーには、ほとんど興味がわかない。

 映画版で好演した広瀬すずは底意地悪そうな腕組みとちんちくりんなヅラで特別出演、株をぐんと下げた。

 オダギリジョーは以前生徒たちにコテンパンにやられた記憶を引きずりながらも、うっかり巻き込まれてチアダンス部の顧問に。病んでるジョー、女子たちが頑張る姿に感化されて、共に成長するの? 心が風邪ひいた状態で、部活の顧問は地獄だぞ、と。唯一、踊りが得意ではなさそうな新木優子を、早々に東京へ送ったのは賢明だったと思う。

 新奇性や心打つ展開は期待できず。でも爽やかであることは間違いない。ぜひご家族でどうぞ。私はざーっと流して、チアダンス最終形を楽しみにしておくよ。

 もうひとつ。NHKが俳優・大森南朋(なお)を抜擢(ばってき)し、硬派かつ生々しく描いたあの名作。これを到底超えるとは思えないというのが、広くあまねく共通見解。さらに、綾野剛と渡部篤郎と聞いて、「めっちゃ軽くてエンタメ性を増し増しにした、茶の間で楽しむライト版」にするのだろうと思っていた。「ハゲタカ」(テレ朝)である。別の意味で楽しみにしていた。が、違った。

 どうやら身の程知らず。NHKの名作に対抗するつもりのようだ。綾野は気合いと肩の力が入り過ぎて、動きがなんだか不自然。舌噛みそう、奥歯割れそう。ポップな鷲津政彦だったら綾野はすごく活きると思うのだが、慣れない重さ・渋さを張り切って店頭に並べちゃった感じ。私が観たい綾野じゃない。リアリティを追求するドラマでは、年齢相応が大切だと改めて噛みしめる。奥歯で。今のところ、ライト版じゃなくNHKの劣化版である。

 が、テレ朝のドル箱路線を支えてくれる年寄りに向けて、綾野がGO!してる。これはこれで、ひとつの様式美。「遺留捜査」のお客さんをそのまま引っ張ることができるか、GO?

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2018年8月9日号掲載

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