〈義母と娘のブルース〉綾瀬はるかも闘った「PTA」の合理化は可能なのか

ライフ2018年7月26日掲載

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PTA会長と闘う

 7月24日に放送された綾瀬はるか主演ドラマ「義母と娘のブルース」(TBS系)のテーマは「PTA」。綾瀬扮する「義母」が、小学校のPTAの非合理的なやり方に疑問を呈したところ、PTA会長らは猛反発。結果として綾瀬が1人で運動会の実務を担わされる――というストーリーだった。

 1人では到底無理だと思われていたが、この難題を優秀なビジネスパーソンでもある綾瀬は、斬新なアイディアと周囲の助けで次々解決。PTA会長は綾瀬の実務能力の高さに脱帽し、綾瀬もまた1人でやることの限界を知る。2人は握手をして、前向きなPTA改革に乗り出していく――ゴールデンタイムのドラマらしく、最後はハッピーエンドを迎え、視聴者に爽快感を与えた。

 が、現実のPTAはそううまく改革できない、というのは関わったことがある母親たちの実感だろう。『PTA不要論』(黒川祥子・著)には、旧態依然とした不合理なシステムに挑み、そして敗れた母親たちの怨嗟の声が詰まっている(以下、同書より抜粋・引用)。

 高3と高1の子を持つ杉原尚美さん(47、仮名)は小学校でのPTAについてこう振り返る。

「春は入学式の手伝いから始まって、先生の離任式だ、総会準備だ、予算チェックだ、名簿作りだと、次々に目の前に仕事が現れて、『このやり方はおかしい、改革しないと』と疑問に思っても、そのままやらざるを得ないんです」

名簿作りとおやつ係

 とりわけ、不合理だったのが名簿作りだ。昨今、個人情報保護法により、学校がPTAに児童生徒の名簿を提供することは禁じられている。

「だから、クラス役員が自分のクラスの会員の名簿を作り、それを持ち寄って、2~3カ月かけて自前で、PTAの名簿を作るんです」

 それだけではない。作成方法も合理性からはかけ離れていた。

「まったくデジタル化されていなくて、全部、目視でチェックするんです。住所、きょうだい関係など間違っているところがないか、役員同士でチェックしあうわけです。この労力、ばかばかしいと思いませんか? こういうことで疲弊するわけです」

 尚美さんは仕事もしているので、自分のクラスの名簿を夜に家で作ろうとした。

「そうしたら、情報流出の恐れがあるから、学校でしか、作業をしてはいけないと言われてびっくりしました。働いていますから、これって『土日に、学校へ行って作れ!』ってことですよね。行きましたけどね。バカバカしいと思いながら」

 もちろん、企業などでもデータ流出対策で自宅作業を禁止することは珍しくない。ところが――。

「そう言っておきながら、PTAのセキュリティはすごく甘いんです。PTA室にあるパソコンは誰でも簡単に開けますし、アクセスできます」

 名簿作りの期間中には、お菓子を購入する「おやつ係」までできたという。作業中、役員は弁当持参で朝から晩までPTA室で過ごすことになる。

「もう、『PTA室に住んでる?』みたいな。役員の弁当代がかさむから、その弁当代をPTA会費から出すことに、賛成か反対かというアンケートが回ってきましたよ」

 尚美さんは呆れ果てた。

「だって、仕事内容を見直すとか、思い切って名簿を止めてメーリングリストにするとか、大変な労力を変えて行く方向にではなく、弁当代に行くのかってことが驚きでした」

改革成功のコツとは

 同種のケースは山ほどある。「なぜこのような不合理なことを平気でやるのですか」と学校やPTAを論理的に攻めていき、事態を変えてくれる綾瀬ママの登場を渇望している親も多いことだろうが、自力で改革に成功した例も存在する。

 高2と中2の子を持つ久保環さん(46、仮名)は、本部役員を3年経験した後、会長を引き受けた。

「PTAって、子どものためと言いながら、子どもと一緒に楽しめる行事は少ないし、やらなきゃいけないというプレッシャーばかりが大きいのに、何のためにやらなきゃいけないのかが分からない。これじゃ誰もやりたくない」

 そう感じていた、環さん。

「『私がこれだけやってるんだから、みんなもやらなきゃダメじゃない!』ってなっちゃう、きっちり派の方もいましたが、私はやれる人がやれる時にやればいいし、各自、得意不得意があるのだから、得意な部分で関わればいいと思うんです」

 まず会員へのアンケートを実施し、現状のPTA活動にどのような不満があるのか、どうしてほしいのかを確認した上で、委員会制度を廃止し、本部と各委員会の正副が出席する運営委員会も無くした。

 各クラスの役員は、連絡係の学級代表1名のみ。本部役員は増やして、イベントごとの統括係とし、そこに一般会員が手伝いという形で加わる。強制ではなく、できる人ができるイベントにだけ関わることにした。

「続けたいと声が上がったものは残しました。夕方のパトロールに運動会の自転車整理、ベルマークも希望者がいたので、強制ではなく、やりたい人たちが無理なく集まってやっています」

 成功の秘訣をきくと、

「チームがあって、できたことです。実行力があったり、アイディア豊富な人がいたり、リーダーシップのある人もいて、チームワークもよかった。私の後ろには協力してくれる人がたくさんいました。私は対外的に前に出ていただけです」

 そして、改革に賛同していない人も巻き込もうと、改革したい人だけで固まらないようにも気をつけたという。

 実態を調査し、問題点を抽出したうえで、対立構造を作らずになるべく多くの人を巻き込む――PTAのみならず、すべての組織改革に通じるコツなのかもしれない。

デイリー新潮編集部