松井秀喜“敬遠”が生んだ国民的論争――「夏の甲子園」百年史に刻まれた三大勝負

スポーツ 野球 週刊新潮 2018年8月2日号掲載

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「夏の甲子園」百年史に刻まれた「三大勝負」――門田隆将(1/3)

 100回目の夏を迎える全国高校野球選手権記念大会。8月5日に開会式が行われたグランドは、百年史に刻まれた忘れられない記憶の舞台である。長年に亘って高校野球を取材するノンフィクション作家・門田隆将氏が選ぶ、甲子園の「三大勝負」をお届けしよう。

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 1世紀にわたって球児たちの死闘がくり広げられてきた甲子園。そこには、現代日本に残された極限の「勝負の世界」がある。

 大人たちが必死で美談に仕立てあげてきた高校野球だが、これほど過酷な勝負の世界は、ほかでは見られない。負けてもあとがあるプロ野球と違い、高校野球は、人生の中で高校生としての「2年半」という限定された期間にしか許されないものである。勝利だけを目指して闘い抜く一方、その期間を過ぎれば、どんなに「もう一度やりたい」と言っても、許されはしない。特に夏の甲子園は、一度負ければそこで人生における高校野球の時代が終止符を打つ場所でもある。

 郷土と母校の名誉をかけて、報酬もないのに一心不乱に勝利を目指す球児の姿が長い年月、日本人の心を捉えて放さなかった理由は、そこにある。

 甲子園の名勝負は枚挙に遑(いとま)がない。それぞれのファンが自らの青春時代を重ねながら自分の「ベスト甲子園」を持っているだろう。私はその中で、日本の夏を騒然とさせた名勝負3試合を振り返ってみたいと思う。

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