「アルプス電気」が狙われた世界一獰猛な「ハゲタカ」ファンド

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軍艦を差し押さえ

 そのやり口は、同ファンドをモデルにした小説『国家とハイエナ』(黒木亮著)に紹介されているが、なかでも、エリオットの名を知らしめたのはアルゼンチンとのバトルだ。

 2001年、アルゼンチンは対外債務のデフォルトを宣言。するとエリオットは額面の約3割(約1億8千万ドル)で債権を買い集める。アルゼンチンは債務の大幅カットを求めるが、同ファンドは拒否。アメリカなど各国で裁判を起こして勝訴判決を取ると、ガーナに寄港中のアルゼンチン海軍の船を差し押さえてしまう。さらには、同国の人工衛星を差し押さえにかかったり、大統領ファミリーの隠し財産を暴いて見せるなど、徹底的に責め立てた。

「その結果、エリオットとの対立が影響し、2015年の選挙でファンドに批判的な候補が敗れてしまう。結局、アルゼンチンは合計22億8千万ドルを支払わされる羽目になってしまったのです」(同)

 エリオットは、投資額の12倍ものリターンを手にしたことになるが、日本企業を本格的に狙うようになったのは昨年のこと。日立国際電気や東芝などの大株主として登場し、次に狙いを定めたのが、アルプス電気とアルパインというわけだ。もっともエリオットは今のところ、具体的な要求は出しておらず、

「面談、話し合いの機会はございません」(アルパイン広報担当者)

 アメリカ最強のハゲタカファンドを相手に、どこまで戦えるのだろうか。

週刊新潮 2018年8月2日号掲載

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