西日本豪雨、避難所で警告される「性被害」

社会週刊新潮 2018年7月26日号掲載

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 西日本豪雨の被災地で設けられた避難所では、場所によっては白い布の簡易間仕切りや段ボールでプライバシーが確保できるようになった。しかし女性たちは、「とてもではないが、ここでは着替えられない」と口を揃えるのだ。

 ならば更衣室で着替えては、と更衣室に目をやれば、扉に、〈性犯罪の防止!〉との赤字。薄着で歩き回ることを避け、複数で行動せよ、と添えられている。

 ここは岡山県倉敷市立薗(その)小学校。甚大な被害が出た真備(まび)町にあり、いまなお、300名近くが身を寄せる避難所だ。

「このビラは、うちが自主的に貼ったものです」

 と、小学校の教頭が語る。

「なにか犯罪があったわけではありません。が、東日本大震災や熊本地震で性犯罪が発生したことは知っておりますので、注意喚起が必要と考えて作りました」

 各地が土砂崩れや洪水に襲われてから1週間、7月12日ごろに作ったという。

「同じころ、体育館の周囲に防犯カメラも設置しました。怪しい車や不審者の出入りがないかチェックできるようにしてあります」

 血も涙もない火事場泥棒もいる。決して大げさではない。同じ真備町の吉備路クリーンセンターのホワイトボードにも、

〈避難所・避難先では女性や子どもを狙った性被害・性暴力、DVなどが発生するリスクが高まります〉

 そう警告する市役所作成のチラシ。〈性的な嫌がらせやいたずらなど尊厳を傷つける行為も犯罪です〉〈被害をうけたら相談を!〉とも書かれていた。ここに避難している20代女性に聞くと、

「オレンジ色の服でレスキュー隊の格好をした男に襲われたという噂を耳にしました。SNSにも、レイプ事件が起きたなんて投稿があるし、本当に怖いです」

 事件の報にはまだ触れていないが、防災担当の内閣府関係者は憂いを隠さない。

「先の熊本地震では、地震が起きた2016年度だけで、強制的な性交や盗撮などが約10件に上りました。避難所で寝ていた10代の女の子をボランティアの少年が襲った、ショッキングな事案もある。ただ、被害者が申告しなかったり、避難所の管理者が通報しないケースも多く、避難所での性被害は全容がなかなか掴みにくいのが実情なのです」

 どの避難所でも、首にタオルを巻き、白いTシャツに汗を滲ませた女性が見受けられた。彼女たちは、傷んだ自宅を片づけ、土砂をかき出す作業などをして避難所に戻ってくるのだ。着替えるのは、風呂と親族宅へ行ったときだけである。

 酷暑の避難所で過ごす労苦に加え、性被害の闇にも怯えねばならないとは……。

特集「『西日本豪雨』暴虐の爪痕」より