豪雨災害のなか、野党はまた「内閣不信任案」 国会での不毛な議論を終わらせるためにどうすればいいか? 石破茂はこう提言する

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野党のだらしなさを馬鹿にしない

 このように野党がいかにだらしなくても、与党は真摯に向き合うべきだ、とも言う。

「野党の質問でも、おそろしくレベルの低いものがあります。どこから説明していいか悩んでしまうこともあるでしょう。それでも、相手が有権者代表だと思えば、馬鹿にすることはできません。どんなにエキセントリックな質問でも、小馬鹿にしたり、からかったりという態度を示してしまうと、かえって相手に攻撃の糸口を与えてしまいます。

 そもそも野党の仕事は、突き詰めて言えば時の政権を倒すこと。内閣総辞職に追い込むか、衆議院を解散させることです。

 自民党は野党時代にそのように明確に目標を定めていたからこそ、不適格な大臣や非常識な政策、一つ一つを戦略的に狙い撃ちにして、閣僚を辞任に追い込んだり、法案を廃案に追い込んだりできたのです。

 そのためには政策論争を挑むのはもちろんですが、時には疑惑やスキャンダルも利用する。与党には、野党とはそういうものだ、というくらいの覚悟が必要です。

 それは裏を返せば、与党はすきを見せないようにしなければいけない、ということです。疑惑があれば早目に手を打ち、調べて自ら率先して説明をすることが重要です。ここでも正直さ、誠実さがとても大切なのです」

「ひいきの引き倒し」ではいけない

 こうした考えから、石破氏は様々な疑惑が取り沙汰された際、常に政府は丁寧な説明をすべきだ、という持論を一貫して繰り返してきた。

「それは今に始まったことではなく、政治家になってから一貫して取ってきた行動です。自分が正しいと思うことを自由に述べられなければ、政治家になった意味がありませんし、また自民党は多様な意見により強さを増す、言い換えれば国民の支持を得る政党だと思うからです。

 ところが、そのような言動を快く思わない方の中で、『政権の足を引っ張るな』『後ろから弾を撃つような卑怯なまねはやめろ』という趣旨の批判が多くあり、私は非常な違和感を禁じえませんでした。『あまりタテをついていると、ロクなことになりませんよ』という類のアドバイス(?)もありました。

 よく、企業の方々とお話ししていると、『自民党』を一つの会社組織に例えられる方が結構おられますが、自民党に限らず、国会議員と所属政党とはそのような関係ではありません。むしろ『経団連』や『経済同友会』のような組織だと思っていただいた方が近いのではないかと思います。それだけ、個々の国会議員の独立性、自立性は高いのです。だからすべてにおいて『上意下達』の関係にも限度がありますし、国会議員が忠誠を誓うべきは自らを選んでくださった有権者であって、『自民党本部』や『〇〇内閣』ではありません。私たちは有権者の代表として選ばれた、独立した存在なのです。

 さらに言えば、私が持論を述べているのは、『多様な意見こそが自民党を強くする』そして『その強い自民党の中の議論で洗練された政権こそが国民の支持を得て強くなる』と信じているからであり、安倍政権を支えたいと思うからこその異論であることも、先に述べたとおりです。私からすればそれで『足を引っ張るな』というのはあまりに的外れですし、そのような言説こそ『ひいきの引き倒し』となるのではないかとかえって心配になりました」

 支持者とアンチがいがみ合い、その延長線上で与野党が不毛な対立を激化する。もはや日本にそんなことをしている暇はないはず、という点だけは一致できるだろう。まずはその共通認識から冷静な議論を始めることはできないのだろうか。

デイリー新潮編集部

2018年7月25日掲載

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