官僚はなぜ長期的ビジョンを描けないのか 元経産省キャリアが指摘する「先送りシステム」の弊害

政治2018年6月29日掲載

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官僚もコロコロ変わる

 政権がコロコロ変わるために、長期的な問題に落ち着いて取り組むことができない――第2次安倍政権発足以前にしばしばこうした指摘はなされてきた。こうした問題意識が、現政権の支持を底支えしている面もあるだろう。「ちょっとは落ち着いて政治をやってもらおうじゃないか」ということだ。

 このように短期政権の弊害は多くが意識するところだが、一方で見逃されがちなのは、官僚のほうの「コロコロ」問題である。実は、官僚側も政治家に負けず劣らず、長期的な視野を持てないシステムになっている、と指摘するのは元経産省キャリアの宇佐美典也氏だ。

 宇佐美氏は新著『逃げられない世代――日本型「先送り」システムの限界』の中で、こう述べている(以下、引用は同書より)。

「官僚は公務員で選挙と関係なく雇用が安定していますから、国会議員に比べれば腰を据えて長期的なスパンの政策立案ができるはずの存在です。しかしながら官僚の側にもそうはいかない事情があります。それは人事制度です。

 日本の中央官庁は内部昇進を前提とした年功序列型の長期雇用制度を取っているので異動のスパンが短くなり、課長補佐以下は2~3年、課長以上の幹部級は1~2年ごとの異動で部署が頻繁に変わってしまうという特徴があります。

 また組織がピラミッド型の構造になっているため幹部ポストは少なくなり数が限られてしまうので、人事の停滞を避けるため幹部ポストは1人当たりの在籍期間をますます短くして回転率を高くする必要が出てきます」

 要するに本人の専門性とは関係なく、部署の異動がありうるし、どんなに優れたトップであっても1~2年で退職となるということだ。セクハラをしていようがしていまいが、次官の任期は短い。実績や成果を重視する民間では考えづらいことなのだが、これが官僚の世界の常識である。

後輩に任せよう

 たとえば図は宇佐美氏の勤め先であった経産省の菅原郁郎元次官の異動遍歴。1997年から2017年までの20年の間に13ものポストについている。それも「石油公団」の仕事もあれば「生活産業局」もあるし「総務課長」もある。オールラウンドプレイヤーといえば聞こえはいいが、弊害はもちろんある。

「責任者たる管理職ポストの在任期間が非常に短いため、日本の官僚はたとえ担当分野に何らかの長期的な課題やリスク要因があったとしても、その抜本的な対策となる長期的な政策の立案に取り組むことは困難になります」

 結果として政治家のみならず、官僚側もまたせいぜい2~3年で実現できる対症療法的な政策を立案することが基本的な姿勢となる。子孫の将来をみすえた政策、長期的なビジョンを打ち出さなくなるのである。

「そうして任期が来れば後任に引き継がれることになり、その後任もまた問題がある限り対症療法的政策を立案してまた後任に引き継ぐ、ということが繰り返されていきます。これが官僚側のいわゆる『先送り』の構造です」

 実は日本に活力があり、経済が順調に成長している時期ならばこれでも問題はなかった。官僚が先送りしている間に、民間が何らかの形で問題を解決してしまったからだ。

 しかし、問題はもはやそういう時代ではないにもかかわらず、「先送り」を助長するシステムは維持されていることだ。

 こうした問題点を明らかにし、是正するのは政治の仕事、国会の仕事であるはずだが、そこでは不毛な議論ばかりが繰り返されているのはご承知の通りである。ではなぜ国会もまた問題を「先送り」するのか。その本質的な欠陥についての宇佐美氏の解説は次回ご紹介しよう。

デイリー新潮編集部