「村上世彰」が創業家を揺さぶった「出光」「昭和シェル」統合劇

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株価急騰

 ところが、今年は総会の前日になって創業家側の弁護士が辞任。名誉会長の長男・出光正和氏(出光の筆頭株主・日章興産社長)が、一転して経営統合に賛成する。

 その背後にいたのが、村上氏だ。同氏は、昨年秋頃から創業家と接触し、自分自身も出光の株を1%近く買い集めていた。

 出光の関係者によると、

「村上さんは、創業家の株買い増しにも協力していました。2%の株を追加取得するために必要な資金は約150億円。しかし、事前に出光側が手を回していたこともあって、メガバンクは資金を融通しなかった。そこで、創業家が頼ったのが、村上氏でした。村上氏は、自分が株取引で使う準大手証券を紹介し、保有株を担保に資金を調達してあげたのです」

 一方で、大株主になった村上氏は出光との交渉にも乗り出す。

「村上氏は、新会社に“出光”の社名を残すことや、正和氏を取締役に就けることを提案したといわれています。もともと、出光と創業家との話し合いで、大株主(創業家)から取締役を受け入れることは検討されていました。正和氏にとっても悪い話ではありません」(同)

 筆頭株主の日章興産と、その社長を務める正和氏の持ち株を合わせると約14%。これだけの株主が会社につけば、勝負はついたも同然だ。

「出光昭介氏は、今も反対を表明してはいますが、高齢のため実際にはあまり口を出していません。目下、ファミリーで強く反対しているのが次男の正道氏ですが、長引けば株買い増しのために借りた金の利払いも大きな負担になってきます」(同)

 折しも、創業家が軟化したとのニュースが流れると、出光株は急騰した。ひと肌脱いだと見せて、村上氏もまた、しっかり儲けているのである。

週刊新潮 2018年7月19日号掲載

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