追悼・カザフの英雄「デニス・テン」さん 大の“親日家”で韓国からクレームも…

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英雄の子孫でも“謝罪しろ”

 ソチ五輪では同じ表彰台に上がりデニスさんとはライバル関係にあった羽生結弦(23)は、SNSのアカウントを持っていないため所属するカナダ・クリケットクラブの連名で声明を発表している。

「16年のボストン世界選手権の公式練習中に接触しかけて声を荒げたという羽生ですが、あの時の一部の羽生ファンからデニスに宛てた誹謗中傷のメールは恥ずかしかったですね。どちらも勝負をかけた直前でお互い様だったのですから」(同)

 一方で、国を挙げてデニスさんを上げたり下げたり騒々しいのが韓国である。

「男子フィギュアに強豪選手の少ない韓国では、メダルを取ったデニスがコリア系カザフスタン人で、しかも日本と戦った独立運動家の子孫とわかると、“義兵隊長の玄孫”がメダルを取ったと大騒ぎ。亡くなったときもデニスの枕詞になっていましたからね。しかし、日韓の関係が悪くなっていた朴槿恵政権の頃、いかにも子供っぽいデニスが日の丸の鉢巻きを巻いて撮った昔の写真がネット上で出回るようになるんです。韓国では『謝罪しろ』との声も上がりましたから、彼も韓国には気を使ったでしょうね」(同)

 いくら先祖とはいえ、デニスさんの祖母のそのまた祖父の話を持ち出して、「謝罪しろ」とは――いかにも韓国らしい。もっとも彼自身は、カナダ人ブロガーのインタビューに先祖のことを尋ねられて、こう答えた。

「2010年に韓国で四大陸選手権が開催される前に、韓国のテレビ局が取材に来ることになり、祖母が話してくれて先祖のことを知ったんです。自分の先祖に英雄がいるのは素晴らしいと思いましたよ。(中略)実は、それを知らなかったころ、あるショーで日本の国旗の鉢巻きを渡されて頭に巻いたことがあるんです。先祖のことを聞いて、恥ずかしいとも、申し訳ないとも思いましたが、戦争はもう終わって、世の中は変わっていますからね。今は祖先が誇りに思ってくれるような生き方をしたいと思っています」(「SKATE GUARD」2014年1月28日)

 真っ当な考えだが、韓国で謝罪の声が高まるのはこの後である。

 現在、在日本カザフスタン共和国大使館は、日本人ファンのため、大使館内に献花台、記帳台を設け(23日まで)、デニス・テンさんとの別れを惜しんでいる。

週刊新潮WEB取材班

2018年7月22日掲載

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