東京医大の裏口事件、「点数操作」はいかにして行われたか 当世“裏口入学”事情

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 文科省の私立大学支援事業を巡る汚職事件で、科学技術・学術政策局長を務めていた佐野太容疑者(58)が受託収賄容疑で逮捕された。支援について佐野容疑者が助言する見返りとして、東京医科大学の臼井正彦理事長(77)と鈴木衛学長(69)は、同大を受験した佐野容疑者の息子の点数にゲタをはかせるよう指示したとされる。

 支援対象に認定された同大は5年間に亘り1億5千万円までを受け取ることになっていた。1.5億円の税金で医大生の資格を買った、前代未聞の裏口入学である。

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 捜査関係者のひとりに、これまでの東京医大の合否判定システムの一部を明らかにしてもらうと、

「一般入試は1次が学科で400点満点、2次が論文で100点満点です。1次のマークシートを突破するのは3千余の受験生のうち450人前後。問題作成は予備校に依頼しているから漏洩は難しく、採点は機械で自動的に出ちゃうからイジるのはリスキー。臼井理事長も“1次は実力で通ってもらわないとダメだな”と話してきたようだから、問題は2次だった」

 400字ほどの論文を2人が持ち点50ずつで採点し、1次の点数と合わせたうえで、補欠も含め150人程度が合格となるのだが、

「2次までの点数が出そろったら、入試翌日に開かれる合否判定会議に諮られる。出席するのは学長、副学長、病院長らで理事長は出られない。そんなこともあって、“この人は大事だから”と、何人かには前もって伝えておくみたい。会議の席では意を汲んだ幹部が裏口対象について、“この子の論文、もっと点を高くした方が……”とか遠回しに言って、加点されるらしい。最上位・最下位を除けば、同点でかなりの人数が並ぶ状態だから、20点も加点すれば、ごぼう抜きなんだとか。今回は自分の懐に入る類のカネじゃないわけだけど、臼井さん、過去はどうなんだろうねぇ?」(同)

 大学の現職幹部にこの話をぶつけてみると、

「うーん、そうですねぇ。10年続いた『臼井政権』への反発は根強く、副学長のうちひとりと病院長は『アンチ臼井』で連携しています。鈴木学長が臼井さんの傀儡とはいえ、その場で論文に加点しようというやり方を押し通せたかどうか、正直微妙なところはありますね」

 実際、当の会議に出た人物は、

「論文に点を加えようという話はなかったし、仮にあったとしたら真っ向から反対していました。我々の前には受験生の氏名と1次と2次の点数がリストになって配られ、特に何の問題もなく進んだ。1次の学科試験の点数が操作されていたと見るしかないですよね」

 と、捜査関係者の言う「リスキー」な手法が採られたようににおわせるのだった。

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