「紀州のドン・ファン」事件の迷宮! 金庫から消えた3億円

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“金返せ!”の電報

 実は以前、野崎氏はスーツケースの預け先とトラブルになっていた。

「2年半くらい前、わしはあの人の会社でアルバイトをしたことがあった。宴会場に酒を配達する仕事で、半月働いて、15万円貰うた。それからしばらく経って、“東京に行っている間の1週間でいいから荷物を預かってくれ”と頼まれたんよ」

 とは、野崎氏の自宅近所の住人(80)である。

「それが、ガムテープでグルグル巻きのスーツケースやった。お礼にと4万円を持ってきた。何が入っていたか、わしは知らん。そんなんが3、4回あった。最後、スーツケースを返したら“ガムテープが剥がれとる”“2千万円盗んだやろ”などと言いがかりをつけてきたんよ。去年の正月のことやが、“金返せ!”という電報を寄越したり、玄関前に嫌がらせのビラを大量に撒かれたりしたから、警察に注意して貰うたんよ」

 野崎氏の怪死直後、捜査員があらためて、このときのトラブルについて事情を聞きに来たという。当初から、警察は隠し金に関心を向けていたのかもしれない。

 ともあれ、自宅近所の預け先は失ったものの、野崎氏はそれ以降も、信頼の置ける知人宅などにスーツケースを預けていたようである。

 前出の会社関係者によれば、

「警察が金庫を開けるときに立ち会った“番頭格”をはじめ、6人の従業員は金庫に隠し金が残っていると思っていました。ところが、空っぽだったので衝撃を受け、“一体、どこに消えたのか”と首を傾げている。もしかすると、社長に命じられてスーツケースをどこかに運んだにもかかわらず、それを黙っている者がいるのではないかと、従業員同士で疑心暗鬼になっています」

 この隠し金が、事件の謎を解き明かすカギになるのだろうか。

 捜査関係者が明かす。

「わずか3カ月半の結婚期間で50億円の遺産のほとんどを相続することになる妻に、まずは疑いの目が向けられるのは致し方ありません。でも、遺産目当ての犯行という見方だけでなく、隠し金を奪うのが目的だったのではないかとの疑いが出てくると、捜査も別の取り組み方をしなければならない。隠し金の存在、さらには金庫からそれを頻繁に移動させていた事実を知る人物全員が重要参考人として捜査線上に浮上することになります」

 謎が謎を呼ぶ、「紀州のドン・ファン」怪死のミステリー。迷宮を抜け出し、犯人が突き止められるのはいつの日か。

週刊新潮 2018年7月12日号掲載

特集「『紀州のドン・ファン』事件の迷宮! 金庫から消えた3億円」より

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