大阪地震で役に立ったもの(古市憲寿)

社会週刊新潮 2018年7月5日号掲載

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 朝、揺れと共に目が覚めた。所用で大阪に来ていたら、震度6弱の地震に遭ってしまったのだ。6月18日7時58分のことである。

 正直、地震を怖がるタイプではない。2011年3月11日の東日本大震災の時は、東京三田にある慶應義塾大学の図書館にいたのだが、直後にはこのようなツイートを残している。

「揺れたとき、ちょうど図書館で本を返していて、つり橋効果でカウンターの人と恋に発展するかと思ったけど何もなかった。きっちり延滞金もとられた。」

 だから今回の地震も、揺れに対しては「もうちょっと寝かせてよ」と思ったくらい。ちょうどLINEでやり取りをしていた関西在住の小説家、玉岡かおるさんは阪神淡路大震災がフラッシュバックしてしまった、と言っていた。同じ地震でも、これまでの経験や感覚の鋭さによって受ける印象はまるで違うのだろう。

 外国人も多く泊まるホテルだったのだが、地震のない国からの観光客は混乱している様子だった。確かに街ごと大きく揺れるわけで、何事かと思いますよね。

 その点において僕は鈍くて良かったのだが、問題は東京への帰り方である。どうやら新幹線や在来線は軒並み運休、飛行機も欠航した便が多いらしい。

 こんな時、テレビはびっくりするほど役に立たない。政府が官邸対策室を設置したとかが速報として入るのだが、こっちとしてはそんなことどうでもいい。個人的に知りたいのは新幹線がいつ復旧するのか、どの空港なら欠航がなさそうなのか、ということ。

 しかし全国放送にそんなことを期待しても仕方ない。「とくダネ!」を観ていたら、夏野剛さんが「(震度)6はもうほとんど経験したことがないレベルだと思います」という当たり障りのないコメントをしていた。

「そんなことわかってるから、せめてくすっと笑わせるようなことを言って」と突っ込みたくなったが、災害直後のコメントは本当に難しい。被害の規模はわからないし、死者もいるだろうから不謹慎なことも言えない。

 しかもスタジオの出演者も、視聴者と変わらないくらいの情報量しか持っていない場合が多い。だから僕がスタジオにいても夏野さんみたいなつまらない感じになっていたと思う。

 結局、交通情報を入手するのに一番役立ったのはツイッター。駅や空港で復旧を待つ人が最新情報を共有してくれる。だけど中には嘘も多くて、新幹線は橋桁が損傷したから今日中の再開は無理とか、誤情報に振り回されもした。

 一応、被害の少なそうな関空から羽田への最終便を予約した後に、東海道新幹線が全面復旧したという情報が入ってきた。というわけで、無事東京へ帰れそう。普段のJR東海に文句はたくさんあるが(新幹線内のWi-Fi設定が面倒とか、スーツケースが置けないとか)、このような時の対応はさすが。以上、緊迫する大阪からお送りしました。

古市憲寿(ふるいち・のりとし)
1985(昭和60)年東京都生まれ。社会学者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。日本学術振興会「育志賞」受賞。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した『絶望の国の幸福な若者たち』で注目される。著書に『だから日本はズレている』『保育園義務教育化』など。