揺れなかった? 地上300メートル「あべのハルカス」の大阪地震

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 地面の上にいたって恐怖を感じる揺れだ。地上300メートルの高さにいれば……。

 大阪に聳える日本一の高層ビル「あべのハルカス」。ここに居合わせた人は、その瞬間、何を見たのか。

 このビルは、大まかに言えば、下の3分の1を百貨店、中の3分の1をオフィス、上の3分の1をホテルが占めているが、

「はじめに下から押されるような揺れが来たんです」

 と言うのは、問題の7時58分、17階のコンビニに勤務していた女性である。

「その後、横に揺れ、30秒ほどで収まりました。正直、立っていられないほどのものではなかった。棚から商品が落ちることもなく、お客さんは涼しい顔で買い物を続けていましたから」

 37階の事務所にいた女性も言う。

「揺れは、そこまですごくなかった。クルーズ船に乗って、“揺れているなあ~”って思う程度。怖いとは思いませんでした」

 最上部の58~60階には大阪を一望できる展望台がある。そこのカフェの店員も、

「午後に店に来ましたが、何も落ちたりしておらず、いつも通りでしたよ」

 と、いずれも意外なお答えなのだ。

「あべのハルカス」の竣工は2014年。運営・管理会社の近鉄不動産によれば、

「耐震構造に力を入れ、さまざまな最新技術を使用しました。例えばビルの全身に耐震ブレースという筋交いを張り巡らし、全体の強度を上げました。こうして建物の揺れ幅や揺れる時間を低減しているのです」

 高層ビルについては、長い周期の揺れとビルの揺れが共振し、上部ですさまじい揺れが起きる「長周期地震動」への対策が盛んに指摘されている。これにも十分に対応した設計になっているというワケなのだ。

 安全なのは結構。が、

「もうクタクタでしたよ」

 とこぼすのは、当日、地震の30分ほど後にオフィスに出勤した男性である。

「エレベーターが全部止まり、みんな17階まで階段を上っていきました。10分はかかったかな。汗だくになって、ハアハア言いながら500ミリリットルの水を飲み干しました。一日の体力をすべて使った感じ。もう仕事にならなかったですね……」

 日本一ならではの「難点」でもある。

週刊新潮 2018年6月28日号掲載

特集「天災と人災に揺れた『大阪大地震』」より

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