子どもは「いじめを受けている」と言わない いじめに気づくための3つのポイント

国内 社会 2018年6月27日掲載

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 いじめの認知件数は2016年に32万件を超え、過去最多となった。いじめによる自殺も後を絶たない。子どもをいじめで死なせないために我々大人に何ができるか。6月26日、日テレ系情報番組「スッキリ」で、いじめで子どもを死なせないための取り組みが特集された。番組では息子がいじめによる自殺に追い込まれてしまった篠原さん夫妻が取材に応じ、いじめを見逃してしまった後悔と息子が発していたサインについて明かした。

いじめに気づけなかった後悔

 篠原夫妻は2010年6月、息子の真矢(まさや)くんを自殺で亡くした。もともと明るくて正義感の強い子だった真矢くんは、中学2年の秋、いじめられている友達をかばったことで、真矢くん自身がいじめの対象になった。殴る蹴るはもちろん、羽交い絞めにしてズボンやパンツを下ろすなど、いじめは徐々にエスカレート。加害生徒に言わせると「いじり」の一環だったというが、進級してもいじめはおさまらず、中学3年の6月、いじめに耐えかねた真矢くんは自宅で薬品を使い自殺してしまった。

 両親は遺書を読み、初めていじめの事実を知った。母親の真紀さんは「今思えばSOSのサインだった」とわかる2つの異変について話した。中学2年生の2月頃、帰ってきた真矢くんの様子がおかしく、何かあったのかと聞くと「僕の大好きな友達がいじめられている」と重い口を開き話しだした。しかし「友人が」いじめられているということしか言わず、本当は自分もいじめられているという事実は、最後まで隠したままだった。それを受け真紀さんは「一人じゃ大変だから、他のいじめのことが嫌だと思う子達と一緒に戦うなら戦いなさい」と言ってしまったという。その対応について「親に言ってくれた時は黄色信号ではなく赤信号だったのにまだ動け、戦えと言ってしまった」と後悔を口にする。

 また自殺の2週間前、真矢くんがクラスメイトの教科書をハサミで切ってしまった、と学校から電話がかかってきたという。そのクラスメイトが友人をいじめていた主犯格の少年であることを真矢くんは告白した。その時真紀さんは「友人をいじめる生徒への仕返しにそういうやり方をしたら、真矢が悪者になってしまう。やり方間違っちゃったね」と説いたという。しかし真矢くんは「お母さんは何もわかってない、お母さんは偽善者だ」と泣き出して話しかけられる状態ではなくなってしまい、心を閉ざしてしまったという。

 学校側はいじめを認識しておらず、「教科書をハサミで切っていた」と伝えたが、実際に真矢くんが行ったのは、カッターナイフでその子の名前の部分を切り裂くという行為だった。それを後で知らされた真紀さんは「普通じゃないですよね。もしその時現物を見ていたらもっと違う対応をしていたと思うんですよね」と悔やむ。父親の宏明さんは「真矢がSOSを出してくれた時、動けなかった両親、学校、周りの大人が何かできたんじゃないのか、と後悔ばっかりです。それは今だから言えることですよ」と振り返る。いじめは他人事ではない、それを理解することで救える命がある、と2人は話す。「被害にあっている子が苦しんでいるかどうかがキー。子どもが死んじゃうかもしれない危険性をいじめは秘めているということを認識して欲しい」と絞り出すように語った。

いじめに気づく3つのポイント

 番組には、20年以上記者やキャスターとして、いじめを取材してきた岸田雪子さんが出演。岸田さんは著書『いじめで死なせない 子どもの命を救う大人の気づきと言葉』(新潮社)のなかで、子どもが大人にいじめを受けていることを話せない理由や、子どもを救った親の対応について著している。篠原さん夫妻も取材した岸田さんは「子どもは親に心配かけたくないと隠してしまいがち、大人が気づいてあげることが大切だと思います」と語り、親の立場から子どものいじめに気づくためのポイントを3つ紹介した。

 一つめは「スマホとの関わり方」。普段スマートフォンを手放さない子どもが、急に見なくなった場合。これは本人が見たくないSNSのメッセージが届くなど、ネットいじめの兆候であるという。二つめは「筆箱」。学校で日常的に使う持ち物が不自然に壊れていたり、落書きされているなどの現象。そこからもいじめの兆候を窺い知ることができる。三つめは「親の財布」。『いじめで死なせない』では、父親の財布から現金を抜いて加害者側に渡していた男の子のケースが紹介されている。「いじめを受けている子は奢らされたりお金を取られたりすることがいつも続いている形が非常に多い。親のお金を取って渡すしかない子どもたちにとっては罪悪感があるので、親に相談しづらい。一人で悩んでしまいがちです」と岸田さんは解説した。

 また「いじめは最初、友達関係から起こることが多い。日常の会話の中で『仲良しだったはずなのにちょっと違うな』といったサインがある。眠れない様子やイライラしてる事が続くなというのが、気づきのきっかけになる場合がある」と親が微弱なSOSに気づくことが大切だと訴えた。

 岸田さんの著書では、いじめ加害者の親の言動が子どもたちに影響を与えていることや、学校側の「いじめを認めたくない」という心理にまで踏み込んでいる。番組でも「小さないじめの初動のうちに対応すれば、善悪を教えるという教育ですから、日常の教室の中で教えていけるはずなんです。いじめをタブー視せず、日常にいじめはあるものとして子どもたちにどう教えていけるのか、大人の側の言動がまさに問われている」といじめ自殺を防ぐための取り組みに理解を求めた。

デイリー新潮編集部