【対談】10年生き抜く「変化術」 超ポジティブ「髙田社長」VS超ネガティブ「山田ルイ53世」

ビジネス新潮45 2018年7月号掲載

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 数々の一発屋芸人たちの悲喜こもごもを描き「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞した『一発屋芸人列伝』。その著者であり、自らも“一発を風靡”した山田ルイ53世が、波乱のビジネスシーンで生き抜いてきた「ジャパネットたかた」創業者の高田明さんと初対談。失敗や後悔をどう乗り越えてきたかを伺おうと挑んだものの、高田さんの“超ポジティブ思考”にタジタジに――。(以下「新潮45」2018年7月号より転載)

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一発屋という“文化”

山田 社長、ご無沙汰しています。といっても2015年にジャパネットたかた(以下ジャパネット)の社長を退任されて、今はご自身の事務所の代表に就かれてるんですよね?

高田 そうです。今はその会社と、サッカーJ1のクラブチーム、V・ファーレン長崎を経営していて、もう一切ジャパネットにはタッチしてません。

山田 そんなにスッパリ辞められます?

高田 はい、もう鍵も持ってないから東京のオフィスにも入れないんです(笑)。新しい人生で楽しいですよ。

山田 読者の方はなぜこの2人と思うかもしれないですけど、実は社長がまだテレビ出演をされているとき、ゲストで髭男爵が出たことがあるんですよね。今回僕は、一世を風靡した「一発屋」と呼ばれる10組の芸人を取材して、それぞれの生き方を描いたノンフィクション『一発屋芸人列伝』を出版しました。それを書く中で、お笑いの芸と高田社長のされていた通販の見せ方、伝え方って共通する部分があるんじゃないかと思ったんです。……社長、僕の本、読まれました?

高田 秘書からもらったんですけど読む時間がとれなくて、本当すみません。必ず読もうと思って、家に置いてます。

山田 いや、読んでへんやないか!(笑)この本に出てくる芸人はレイザーラモンHGさん、コウメ太夫さん、テツandトモさん、けっこう社長も共演されてる方が多いと思いますよ。そもそも一発屋芸人という言葉、ご存じでした?

高田 1年ですごい人気が出て、翌年ぱっと消える芸人さんですよね。

山田 正確な定義が出ました(笑)。

高田 一発屋になってしまうのは、おそらくその芸人さんが悪いんじゃなくて、世の中がそういう流れを作ってしまっているんじゃないかと思いますね。一発屋という“文化”が作られて、観ている視聴者も「この人たちは1年で消えるだろう」と想像しながら見てしまっている。

山田 ここ数年は特にそうですね。

高田 でもそれは違うんじゃないかと僕は思いますけどね。非常に面白い実力のある人がいるのに、もったいないですよ。

山田 そう言っていただけると有難いです。でも、社長の自伝『伝えることから始めよう』を読んだときに心臓に釘が刺さるような言葉がありまして。「同じことを繰り返していてはいけない」と……。僕らブレイクして10年間、同じことを繰り返し続けてます。

高田 ワインを日本酒に変えたらよかったんじゃないですか?

山田 そんな僅かな変化でいけました?(笑)。でも常に自己更新が必要というのは、芸人も同じですね。

高田 そう思います。もちろん同じでなければいけない部分はありますよ。ミッション、根幹の部分は芸の道でもビジネスでも変えてはいけないですよね。一方で今の世の中はすごく情報があふれて、見ている人も常に新しいことを求めている。だから皆さん、一発屋芸人に違う芸を期待する部分もあると思うんですよ。冗談のように言いましたが、ワインが焼酎に変わるだけでも、別の可能性が出てくるかもしれません。何も180度変える必要はないんですよ。

山田 10年前にその話を聞きたかったですね(笑)。一発屋芸人につきまとう問題で、ブレイク翌年ぐらいにイベントの囲み取材などで必ず「新キャラ、新ギャグないですか」と聞かれるんです。こっちからしたら「えっ、10年かかって編み出したのに、1年でもう終わりなん?」と。でもちょっと目先変えるだけでいいから、とにかく更新していけと。

高田 それはすごく大事な気がしますね。僕もテレビを20年やってましたけど、伝えるときの言葉を3行変えるだけ、見せ方を少し変えるだけで同じ商品をもう10年売り続けられることがあるんです。例えばテレビだけを売っていて頭打ちになれば、ブルーレイレコーダーをつけてみるんです。それでどんな楽しみ方ができるか新しく提案する。あるいは電子辞書で語学辞典ばかり取り上げていたら、今度は健康関連の事典を紹介してみる。するとその電子辞書の見え方が全然変わってくるんです。

成功したら「天狗」に

山田 パフォーマンスによって結果が左右されるという点では芸人も同じですね。もう一つ共通すると思ったのが「テクニックは人間性を超えられない」という社長の言葉です。普段我々が食レポの仕事をするときに「カリッとジューシー」とか「口の中でとろける」のような定番のフレーズがあるんですが、結局のところ、そのタレントへの信頼がないと説得力がないんですよ。若手の人がいくら言葉を尽くしても「ほんまに?」と思われてしまう一方で、好感度が高く実績もある大御所俳優さんが一言「うまい」と言うだけで圧倒的に説得力があったりする。社長はそれと日々戦ってきたわけですもんね。自分への信頼が商品への信頼につながるわけですし。

高田 先日歌舞伎を観にいったときに同じことがありましたね。役者さんが客席の中に僕を見つけて、アドリブで「ジャパネットに電話して聞いてみよう」と言われたんです。その言い方が非常に巧みでね。修業を積み重ねて初めてそれができるんでしょう。30代で70歳の名人の真似をやろうとしても非常にチグハグに見えたり、逆に人気を落とすこともある。必要なのは謙虚な修業でしょうね。そう思いますよ。

山田 でも社長、それだけ成功しはったら天狗になりませんでした?

高田 それはないですね。そもそも成功したと言われるのが今でもピンと来ないんです。

山田 それ、本当にピンと来てないですか?(笑)。

高田 ジャパネットの売上が1千億円を超えたときにはすごいなと言われたけど、僕自身は全くそう感じなかった。もちろんうまくいかないこともありましたよ。2010年度に会社の売上が1759億になって、わずか2年後に600億下がりました。でも全然気にしなかったです。

山田 強がりでしょう、それは。

高田 いやいや、全く。

山田 全く? 性格なんかなぁ。

高田 山田さんは天狗になりました?

山田 極端な天狗じゃないですけど、ちょっとは鼻が高くなりました。何年も下積み時代があったので、急に売れて有名になったら、やっぱり人間ナチュラルに天狗になりますよ。

高田 なる意味がわからない。

山田 まずい、説教が始まる(笑)。社長の人生の中で、これは一発当たった、売れたというのはあるんですか。

高田 いや、それもないですね。僕は会社で売上目標を掲げたことがないんですよ。数字ばかり追いかけても面白くないし、興味がないんです。だから上場もしてません。会社を辞めた今は、とにかくサッカーチームの経営に興味が全部行っちゃって……何が一番面白いと思います?

山田 自分のチームが勝つとか?

高田 それも大事ですけど、とにかく人と話すのがめちゃくちゃ楽しい。選手ともそうですし、アウェーにいけば地元の人と話します。そのつながりからチームやビジネスとして目指すものも見えてきます。さらに全国で試合をすれば応援しているサポーター同士のつながりも生まれます。それは地方創生にも、人の幸せにもつながるんです。

山田 お話を伺っていたら今はサッカーのお仕事に夢中なんですね。

高田 そうです。だから言ったんですよ、サッカーで忙しいからこの対談も断ってくれって(笑)。

山田 こらこらこら! でも、社長ぐらい成し遂げてきても、まだ新しいことに夢中になっているというのはすごく勉強になりますね。

高田 人生楽しくないと、ですね。後悔しない、他人と比べない人生。楽しいですよ。

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