【対談】10年生き抜く「変化術」 超ポジティブ「髙田社長」VS超ネガティブ「山田ルイ53世」

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「消えた」「死んだ」と言われて

山田 「人と比べない」というのは最近ようやく共感できるようになりました。もともと妬み嫉みが激しい人間なんです。

高田 全然見えないですよ。

山田 そんなもん全開にしてたら仕事できませんから(笑)。昔は「こいつより前に出ないと」「あいつより面白いこと言わんと」という気持ちが強かったんです。“一発屋”になってからは、自分の名前をツイッターで検索して凹んだり。めっちゃ悪口出てくるんですよ。「消えた」「死んだ」とか。そういうのに苛まれてた時期もあった。でもここ最近、そんなことに心や頭の労力を使うぐらいやったら、自分に集中してとにかく経験値を積んでいく方が楽やし、効率ええなと思ったんです。社長はそういうネットの声とどう付き合ってるんですか。

高田 参考にはしますが、あんまり気にしないです。悪口を言われて自分はそうじゃないと思ったら、それを信じてやるしかないですよね。

山田 芯が強いんですね。ずっと自分を信じてやってきた。

高田 「自分はできる」と自分自身が信じなければ、誰が信じるのかと思っています。もしネットに書かれたことが間違ってると思ったら、時間をかけてそう思われない世界に導いていくことが大事なんじゃないですか。あるとき、お客さんに言われたんですよ。「社長の言うことを聞いてたら衝動買いさせられた」って。

山田 どんな角度のクレームや(笑)。

高田 僕が良いと思って紹介した商品を買っていただいた。でもそれを衝動買いと捉えてしまう人がいる。その方の心をどう変えるかと考えたら、まず僕自身が商品の選択を絶対間違わないこと。本当にいいものを提供して、本当の姿を語っていく。過大には言わない。でも、力強くしゃべる。商品が届いたときに「買ってよかった」と、支払ったお金の価値を感じてもらえれば、それは衝動買いではなくなるんです。

山田 僕も布団クリーナーのレイコップ買いましたよ(笑)。僕が出演しているラジオ番組でジャパネットの社員さんとお話しすることがあるんですけど、皆さん商品の説明をするときに自分で使ってみた感想とか、具体的な話を盛り込むんですよね。すごくわかりやすい。で、みんな一生懸命なんですよ。「俺も助けたらな、一緒に盛り上げたらな!」っていう気になる。社員に伝え方を教えたりしたんですか?

高田 全然教えてないです。みんな僕を見て勉強したみたいです。

山田 職人の世界ですね。社長が最後にテレビショッピングに出演されたときの映像を観たんですけど、丸尾詩織さんという若い社員の方と電子辞書を売ってましたよね。それで最後に丸尾さんが感極まりながら「お値段は2万9980円!」と……僕が「涙の3万円切り」と呼ぶ名シーンです(笑)。でも社長怖いなーと思ったのが、直後に「みなさん、丸尾もこの辞書で英語を学んで成長したんですよ」とその涙さえ辞書の魅力に繋げていた(笑)。あれは社長の集大成やと思ってます。テレビ出演をやめて寂しくはなかったですか?

高田 なかったですね。切り替えはシンプルなんですよ。シンプル脳。でも、やめたことを後悔することだけはしたくなかったですね。人間ってね、後悔するんです。後悔しないためには、今を一生懸命に生きることしかないんですよ。

山田 後悔しちゃいがちですけどね。

高田 ブレイクの時にやっておけばよかったという後悔はありますか?

山田 ありますよ! もっと業界の人と飲みに行けばよかったとか……。スタッフさんやタレントさんとお付き合いしたら、現場でもその関係性は反映されますから。でも僕、そもそもあんまり社交的じゃないんです。仕事のスイッチ入れてるときは大丈夫なんですけど、そうじゃないときは本当に暗い、付き合いの悪い人間なんで。

高田 じゃあ一緒ですね(笑)。

山田 社長もふだんはトーンが低いらしいですね。あとは、あの頃から文章にも挑戦しとけばよかったとか、いろいろ後悔はあります。

高田 でもそれは後悔する必要はないですよね。そのときの状況の中で下した決断だから。今は次の人生を歩んでいますし、10年20年歩んでいく中でいつでも変えていけますよ。

山田 今の課題に集中して取り組んでいれば後悔しないし、次にやるべきことも見えてくると。僕もその感覚はわかるところがあって。考えてきたネタをライブでお客さんにぶつけますよね。そこで「アカンかったな」「じゃあこっちにしよ」みたいに“素早く失敗する”ことって大事やと思うんですよね。てきぱきとスピーディに失敗していって、結果残ったのが勝ちの目、という感覚がすごくある。今に集中して一生懸命やらないと、失敗さえもでけへんって思うんですよ。

高田 一生懸命やって出てきた課題をつぶしていく中で、新しい世界がだんだん見えてくる。一発屋芸人さんも違う世界に飛び込んだり、新しい道を作ることだってありえますよ。

山田 実際新しいことやられてる方もいらっしゃるんです。レイザーラモンHGさんは今普通にスーツを着てコンビで漫才やってたり、天津・木村さんは副業でロケバスの運転手をしている。みんなそれぞれ考えながら新しい道を模索しています。

高田 周囲は言葉をかけてくれるけど、やるのは自分ですよね。そうじゃないと現実は変えていけないですよ。芸人さんに限らずそうです。強い意志を持っていれば、誰でも自己更新できるし、人生の階段を上がっていけると思いますけどね。

50年後の姿を描かない

山田 人と比べてなんぼお金を稼がなアカン、どれだけテレビに出なアカンという発想よりは、昨日の自分より一段でも二段でも上がっていくという考え方の方が集中しやすい感じはありますよね。

高田 それでその先どうなるか、未来のことはわからないですよ。就活生に向けた講演でよく言っていたんです。「10代、20代のときに50年後の姿を描いたらだめですよ」と。年を重ねるうちに人と出会い、読書もして、考えや生き方が変わっていく。ましてこれほどIT化、グローバル化が早い中で未来を決めることなんてできません。ただ、入社して配属が決まったら、とにかく絶対そこに価値を見出すこと。この仕事はつまらんという発想をする人は成長しないです。どこの部署に行ったって面白いんですよ。やるべき課題はどこにでもいっぱいあります。

山田 やる前から身構えて、自分に合ってるのは何かな、これが私のやりたいことなのかなと立ち止まっている人は多いかもしれないですね。

高田 それでは未来は語れないですよ。

山田 未来から逆算して将来の自分を設計する人はたくさんいますけど、逆の発想ですね。でも一発屋芸人たちも、ブレイクから今にいたるまでに「何年後にはこうなっていたい」という逆算はしてないと思います。ほぼ苦難や試練ですけど、目の前のことにとにかく取り組んでやってきた。僕が今回取材したのはそういう芸人たち、尊敬できる芸人さんばかりです。HGさんも正統派の漫才に取り組んでいるし、ムーディ勝山という右から左へ受け流す人がいるんですけど、今は地方でレギュラー番組が7本あるんですよ。目の前の仕事をコツコツやろうっていう意識を持ってる人間は今も食えてるし、世間的にビッカビカには輝いてないかもしれないですけど、立派に芸人をやっている。

高田 僕はその10組の方の人生を山田さんが語っているところにぐっときますね。なにも全員が目標に向かってうまくいってるわけじゃない。でも、今を懸命に生きている。みんな、そんな人間が好きなんですよ。

山田 僕も好きかもしれないです。社長がジャパネットを創業したのは37歳の時ですよね。ここに出てきている芸人の多くは今それぐらいの年齢です。だからみんなこの後サクセスストーリーがあるかもしれない。

高田 そんな芸人さんたちを描き出した山田さんの文章は読者の共感を呼ぶでしょうね。この芸人のみなさんに取材なさって、その生き方を本にしたんですね。

山田 はい。今日社長が家に帰って読む本が、それです(笑)。ぜひ金利・手数料ジャパネット負担で宣伝をお願いします。

(構成 出来幸介)

高田明(たかた・あきら)
1948年長崎県生まれ。大阪経済大学卒。86年に「たかた」(後に「ジャパネットたかた」)を創業、90年よりラジオショッピングを開始した。2015年、同社代表取締役を退任し、「A and Live」を設立。著書に『高田明と読む世阿弥』など。

山田ルイ53世(やまだルイ53せい)
1975年兵庫県生まれ。地元の名門・六甲学院中学に入学するも、引きこもりになり中途退学。大検合格を経て愛媛大学法文学部に入学するが中退し、上京。99年、お笑いコンビ「髭男爵」結成。著書に『ヒキコモリ漂流記』。

新潮45 2018年7月号掲載

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