訪日客過去最高も「旅行業界」の大苦境 近ツリ社長が“無配”返答

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業績悪化はスマホ

 政治状況や自然災害で、業績が左右されやすい旅行業界。とはいえ、KNT-CTのみならず、業界トップで非上場のJTBも業績は順風満帆とはいえない。業界紙記者によれば、

「JTBの18年3月期決算は、売上こそ1兆3229億円と前年同期比2%増だが、営業利益は49%減の51億円で、最終利益は80%減の10億円と厳しい数字でした」

 大手旅行会社が苦戦する理由には、共通点があるという。

「多くの外国人観光客は、ほとんど日本の大手旅行会社を通さずに日本を訪れている。そこで、JTBは海外の旅行会社と提携したり、買収してビジネスチャンス拡大を模索しています。大幅減益の原因も、海外事業への投資によるところが大きい。その点、KNT-CTの海外戦略は十分とはいえません」(同)

 背景にあるのはIT化。なかんずく、スマホの普及だ。

「昔と違って、旅行会社を通さずにスマホでホテルや、航空チケットなどを容易に予約できるようになった。また、格安を掲げるネット旅行会社の登場で、個人旅行客が大手旅行会社を利用しなくなっています」(先のアナリスト)

 配当について、KNT-CTの総務広報部に聞くと、

「前回の配当は06年度になります。収支状況を勘案し、早期に復配したいと考えております」

 経済ジャーナリストの福山清人氏が、無配が続く理由は“いびつな”株主構成だと指摘する。

「KNT-CT株は、親会社の近鉄グループホールディングスが単独で53・55%を握っているほか、株主名簿には近鉄バスなどグループ企業が数多く名を連ねている。それで長らく無配が続いても、経営陣は安泰なのです」

 大学生の就職希望ランキングでは、人気上位の旅行会社。その人気を維持するのは楽ではないはずだ。KNT-CTの株主総会は、6月20日に開催される。

週刊新潮 2018年6月14日号掲載

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