「早稲田」「慶應」「MARCH」に入れない… 地方創生で私大文系が難化のワケ

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「地方」ではなく「郊外」へ

 駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一氏も、

「実際は、学生は全然地方に流れていません」

 と、政府の狙いが的外れであったことを指摘する。

「データ上は、12年ごろから全私大の45%ほどが定員割れしていたのが、昨年は40%ほどに収まりました。しかし話を聞くと、埼玉や北関東の私立大学関係者が“久しぶりに定員が埋まった”と言っている。学生は地方ではなく、首都圏やその周辺部の人気が低かった私大に流れているんです。郊外の私大のほとんどで入学者のレベルがアップしているようです」

 石原氏はさらに、

「地方の大学から一流企業に割り当てで就職枠がある、というようなインセンティブがないと、地方創生は難しいと思います」

 と加える。結局、あおりを受けるのは、

「1都3県や関西圏の有名私大志願者。彼らは志望校を1ランク下げることを強いられているのです」

 と、安田氏。教育現場は大混乱で、

「知人の高校教師は今年の大学受験について、“併願校を2校ずつ増やさせたが、それでも厳しかった。例年なら受かるはずの子が軒並み落ち、確実に受かるというラインの子しか受からなかった。すべり止めにも落ちた子が多かった”と嘆いていました。有名私大は数年前なら模試でB判定、C判定でも受かることはよくありましたが、今はA判定でないと合格は相当難しい、という印象です」

浪人も増えている

 また、石原氏はこんな指摘をする。

「少子化なので減って当たり前のはずの浪人が、私立文系では増えていて、駿台でも前年比で1・2倍くらいに増加しています」

 ところで私大の、特に文系は、「国策」が講じられる前から入試が激化していた。河合塾教育情報部の富沢弘和部長の話。

「国公立大学は15年の入試から、理科の負担が増えました。理系志望者には出題範囲が広がり、文系志望者も2科目の選択が必要になり、これによりセンター試験が必須の国公立大以上に私大の人気が高まりました。また、リーマンショックから数年は就職が厳しくなったこともあり、手に職がつく理系の人気が高まりました。しかし、ここ数年は就職率も上がり、再び文系の人気が高まっています」

 そのタイミングで一気に間口を狭めたのだから、受験生はたまらない。

「河合塾ではチューターという進学アドバイザーが受験生の進路指導をしますが、ここ2年ほどはチューターにとっても非常に難しい入試だった、という声が届いています。ベテランのチューターであれば、受験生の模試の成績などから、高い精度で合格の確率を予想できますが、ここ2年は前年の感覚が通じず、合格率が読みづらかったのです」

週刊新潮 2018年6月7日号掲載

特集「『地方創生』が狭き門にした『早慶』『MARCH』を突破する法」より

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