公取委に睨まれた「フジタ」 復興事業で事前に“添削”

ビジネス週刊新潮 2018年5月31日号掲載

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 リニア中央新幹線の談合を暴き、地方銀行の統合にNOを突き付けた公正取引委員会の杉本和行委員長(67)。再任されたばかりの“市場の番人”が選んだ新たなターゲットは、準大手ゼネコンのフジタだった。

 宮城県仙台市内にある、農水省の出先機関・東北農政局。そこから自動車で3分ほど離れた築32年の古ぼけたビルの一室で、4年前に2人の男性が膝を突き合わせて密談を重ねていたという。

「例のプロジェクトの入札で、うちはこんな技術提案をしようと考えている。是非“添削”して欲しいんだがね」

 不遜にも聞こえるフジタ社員の口調に対して、東北農政局の職員は慇懃な態度で、

「十分注意して、“添削”させていただきます」

 東北農政局は、東日本大震災の影響で荒廃した田畑などの復旧事業にかかる予算約1649億円を握っている。だが、受注業者のフジタが、発注元の東北農政局の職員に不遜な態度を取るのは逆ではないか。

「実は、このフジタ社員は東北農政局OBだったのです」

 こう指摘するのは、全国紙の社会部記者だ。

「具体的なプロジェクト名や金額は公になっていませんが、東北農政局が2015年度に発注した復興事業で、フジタは東北農政局からの天下り社員を通じて現役職員から落札情報を得ていました。彼らが密会していたビルの一室は、“北杜(ほくと)会”という東北農政局のOB約200人が参加する親睦会の事務所。この会は、ゼネコン各社が加盟する建設業界の任意団体・東北土地改良建設協会のオフィスに間借りしています」

 公取委はフジタの情報収集が独占禁止法違反(不正な取引方法)に当たるとして、5月17日付けで再発防止を求める排除措置命令を出した。

落札額より技術評価点

 今回、ゼネコン業界で話題になったのはフジタが農政局の現役職員に依頼した“添削”だ。中堅ゼネコンの元役員の解説では、

「フジタは、落札に必要な総合評価点制度の技術評価点を高めようとしたのでしょう。この制度では、入札額と技術評価点の合計で受注企業が決定されます。かつて、ゼネコン各社は役所から落札予定額の情報を“天の声”と称して事前に入手し、調整役が談合を繰り返していました。そこで13年前から談合防止を目的にこの制度が導入されたわけです」

 総合評価点制度の導入後、プロジェクトによっては落札条件で技術評価点が1対1や3対1と重きをなし、フジタのような準大手ゼネコンにも落札のチャンスが増えたという。

「技術評価といっても多岐に亘るが、役所が重要視する技術はそれほど多いとはいえない。そこでフジタは、入札に必要な技術提案書を東北農政局の現役職員に見てもらい、“添削”という形で役所が求める“解答”を事前に聞き出していたのです。現役職員も“添削”を行うことで天下り先を確保できる。彼らは、“ウィン・ウィン”の関係だと考えていたのかもしれません」(先の記者)

 先輩後輩の助け合いといえば聞こえはいいが、要するに、“官製談合”でないのか。東北農政局の広報参事官に聞くと、

「仮に、事実であるならば被災者の方々を初め、国民のみなさま方にお詫び申し上げたいと思います」

 また、フジタは、

「農政局からの再就職者は5人いて、そのうち1人が北杜会の会員です」(広報室)

 復旧、復興とは名ばかりの巨額予算。結果、被災者のためではなく、役所と建設業界を潤しているだけなのである。