東大・IBMの「ワトソン」のビッグデータが読み解く「がん遺伝子」 AIが切り拓くがん治療の最先端

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AIが切り拓く「がん治療」の最先端(5)

 AIは様々ながん治療に応用されようとしているが、それを可能にしたのは人知を超えた情報処理能力。いわばビッグデータを「記憶」し、自動的に「学習」して「推論」を導く能力だが、その本領を存分に発揮するのが「ゲノム医療」の分野である。

 最近とみに耳にする言葉――ゲノムとは、生物の細胞核にあるDNA上の遺伝情報のこと。それを解析することで、個々人の病の元凶が明らかとなり、効果的な処方箋が見つかるのだ。

 斯界の先駆者である、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長の宮野悟教授が解説する。

「なぜ人はがんになるのか。おさらいすれば、がんとはDNAのある一部が、食物やたばこ、お酒、紫外線や放射線、ウィルス感染などの環境因子によって変異することを指します。自動車なら大事な部品がなくなったに等しい。体内の細胞増殖にブレーキがかからず、腫瘍細胞が増加して免疫機能が働かなくなる。健康な身体なら、暴走しても『警察』に逮捕されたり、ディーラーに『修理』して貰えば治まるところ、ひとたびシステム異常が起こると歯止めが利かなくなります」

 そうなって「がん」と診断された患者は、過去の症例に鑑みて抗がん剤などが投与され、効果がなければ別の治療法が試されるという“闘病”を強いられる。

 ところが、同じ臓器のがんでも、DNAが変異したパターンによって、効く薬や治療法は変わってしまう。そこで、宮野氏は患者のがんゲノムを解析することで、より効果的な抗がん剤の候補や、標的とすべき遺伝子をAIが示してくれるシステムを開発したのだ。

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