破産シェアハウスの「実質オーナー」と「村西とおる」監督の意外な接点

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

どちらもスルガ銀行が登場

 村西氏によると、ビデオ安売王とスマートデイズの“ビジネススキーム”は極めて類似しているという。

「日本ビデオ販売も、有名雑誌に『ビデオ安売王』の広告を出し、説明会を開きます。『200万円を投資すれば必ず儲かる』と力説するわけです。会場には複数のサクラが出席しており、口々に『私も絶対に出資します』と絶賛するんですね。真に受けた本当の参加者が200万円を出そうとすると、担当者が『200万円は保証金のようなものです。開業するには1000万円から1500万円が必要です』と説明、最終的にはスルガ銀行に紹介し、融資を申し込ませます」

 真面目に働き続け、前科もなく、200万円ぐらいの貯金がある人なら、1500万円ぐらいのローンは審査を通過できるのだという。

「銀行の融資を元手に資金を回そうとした手口といい、スルガ銀行が“メインバンク”だった点といい、安売王の時とまったく同じことをやっていたわけです。報道によると、スマートデイズは物件の販売価格を水増ししていたと言います。例えば1億のシェアハウスを1億5千万円にして融資させるわけです。眼前の利益に目がくらまなければ、この事業はもっと手堅く経営できたかもしれないと思うと、残念です。それなりのニーズがあったからこそ、成長もできたんでしょう。佐藤という男は、着眼点に優れ、挑戦に挑む覇気があります。それは立派な長所ですが、短所でもあった」(村西氏)

「うまい話には裏がある」

 長所が「覇気」なら、短所は「山っ気」だ。身の丈に合った地道なビジネスモデルを構築できない。1億のシェアハウスを1億で売り、ゆっくりと着実に部屋数を増やしていけば、投資家に損をさせることもなかったかもしれない。だが現実は、強引な経営と資金運用で無謀な拡大計画を突っ走り、あっけなく破綻してしまった。失敗の構図は、ビデオ安売王の時とまったく同じだ。教訓が何も活かされていない。

「ビデオ安売王でも、かぼちゃの馬車でも、一般の人を巻き込み負債を背負わせてしまいました。佐藤氏の責任は極めて重いと言わざるを得ません。弁護団が『実質的な経営者』と明らかにする日も近いと思います。これだけ手口が似ており、スルガ銀行が関与しているにもかかわらず、佐藤氏が経営にまったくタッチしていないというのは通らないでしょう」(村西氏)

 被害者救済は重要だが、やはり他山の石とすることも重要だと村西氏は指摘する。

「『うまい話には裏がある』と疑ってかかることです。投資に対するリスクは、どれだけ高く見積もっても、見積もりすぎということはありません。もちろん被害者の方々はスルガ銀行がバックについているということで、安易に信用してしまったのでしょう。銀行の責任も極めて重いものがありますが、それでも、投資には慎重になることが何よりも重要です」(村西氏)

 今でもインターネット上には「金持ちに勝つにはリスクも必要」や「投資はリスクではない」などという言説が溢れている。眉に唾をつけるくらいでちょうどいいのだろう。

週刊新潮WEB取材班

2018年5月29日掲載

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。